市場集中で進む大企業の寡占…農家「俺は召し使いのようなものさ」 [岐路の資本主義]第2部<4>

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 一部の企業による市場支配が強まるのは、IT業界だけではない。

国有企業の市場支配推進、民営支配は断罪…恣意的な中国の競争 [岐路の資本主義]第2部<3>

 「我々は大企業に乗っ取られてしまった。企業がもうかるばかりで、こっちには還元されないんだよ」

えさを与える肉牛農家のウィテカーさん(2月22日、米テキサス州で)=山内竜介撮影
えさを与える肉牛農家のウィテカーさん(2月22日、米テキサス州で)=山内竜介撮影

 広大な平原に牧場が点在する米テキサス州北部・オルニィ市。4平方キロ・メートルの肉牛牧場を営むジョー・ウィテカーさん(52)は憤る。子牛を育て、肥育農家に売るのが主な収入源だが、安値での売却を強いられ続けているという。

 米国の食肉加工業界は、タイソン・フーズ、JBSといった「ビッグ4」と呼ばれる大手4社が85%のシェア(市場占有率)を握る。4社の意向が反映され、ウィテカーさんの子牛の売値が低く抑えられやすい。

 友人の肉牛農家シャド・サリバンさん(44)も「ビッグ4は子牛が生まれてから皿に盛られるまでの全てを管理している。農家は召し使いのようなものさ」と自嘲する。

 米農務省によると、大手4社のシェアは1977年には25%にすぎなかった。80年代以降、中小加工場に対するM&A(合併・買収)を繰り返し、市場の集中が進んだ。

 肉牛生産者団体「R―CALF・USA」の集計では、牛肉の小売価格のうち生産者に還元される割合は80年頃に62%あったが、最近は37%以下に。下がった分の多くは大手の利益に回ったとみる。

 同団体は2019年4月、「大手4社が共謀し、価格を操作している」として提訴に踏み切った。団体のビル・ブラード最高経営責任者は「牛肉市場は機能不全に陥っており、それを実証する」と語る。

 これに対し、タイソン・フーズは「我々は品質を向上させ、消費者に価値ある多くの選択肢を提供している」と反論。大手4社は徹底抗戦の構えで、訴訟は今も続く。

 バイデン政権は、こうした食肉業界の寡占を問題視する。今年1月には、中小加工場の事業拡大への支援に10億ドルを投じると打ち出した。

 「支援を受けたら賢く活用するよ。技術力があれば、我々も競争力を取り戻すことができるはずだ」。テキサス州で小規模加工場を経営するゲイリー・ヘンドリックスさん(65)は笑顔で話す。

 米政府はこれまで、自由な競争を勝ち抜いて大きくなった企業に寛容な姿勢を示してきた。だが、バイデン政権は一転して大企業に圧力をかける。中小企業が厳しい立場に置かれるなど、寡占の弊害が指摘されるためだ。昨年7月には、反トラスト法(独占禁止法)の厳密な運用などを盛り込んだ72項目からなる大統領令を打ち出した。

 一部の大企業に富が集中し、格差が拡大している――。バイデン政権の姿勢は、資本主義の是正を求める声と呼応する。とはいえ、大きくなろうとする企業の「本能」を無理に押さえると、経済成長の足かせになりかねない。

 カリフォルニア大学デービス校のトーマス・トミッチ教授(65)は「バイデン政権は時機を捉え、政治的に賢明な行動をとっている。だが、その取り組みが成功するかどうかを判断するのは時期尚早だ」と指摘する。

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2973816 0 経済 2022/05/05 05:00:00 2022/05/05 16:49:14 2022/05/05 16:49:14 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/05/20220505-OYT1I50021-T.jpg?type=thumbnail

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