完了しました

東京の下町にそびえ立つ東京スカイツリー(墨田区)は22日、開業から10年を迎える。日本を代表する観光スポットになった一方、コロナ禍による休業で閑散とした時期もあった。ツリーを案内してきたバスガイドは「ツリーは時代の浮き沈みを見てきた。これからも日本を元気にする存在であってほしい」と期待を込める。(長嶋徳哉)

「ネタ帳」
「高さは634メートル。東京の旧国名『武蔵』の語呂合わせで決まりました」。今月10日、はとバス(東京都大田区)のツアーでガイドを務める植田文さん(44)は、車窓から見えるツリーを指さし、参加者に語りかけた。ガイド歴26年のベテランがツリーを案内したのはこれまで200回以上。「洗練されたフォルムが魅力的で近未来を感じる」と特別な思いを寄せる。

同社がツリーを巡るツアーを始めたのは、まだ建設中の2010年春。しかし、植田さんはその1年前から、「必ず東京を代表する観光地になる」と確信して新聞や雑誌を片っ端から読みあさり、独自に情報を収集した。「当初は高さ610メートルを予定していたが、世界一にするため634メートルに延ばした」「淡い水色のライトアップは隅田川をイメージしている」――。参加者の興味をひきそうな話題を「ネタ帳」に書き留めては、ツアーで披露した。
自宅待機
12年5月22日にツリーが開業すると、ツアーは連日満員に。参加者はバスがツリーに近づくにつれ、みなその迫力に驚き、歓声を上げた。前年の東日本大震災を機に落ち込んだ同社の業績はみるみる回復。国内外から押し寄せる観光客にもみくちゃにされながらも、植田さんはガイドができる喜びに浸った。
しかし、そこに襲いかかったのが新型コロナウイルスだった。ツリーは度々、休業に追い込まれ、同社もツアーを全て休止に。運転手や植田さんを含むガイドは自宅待機を強いられた。感染状況が一時的に落ち着き、ツアーが再開されても、東京は敬遠され、地方からの旅行客が戻らない。週末もバスの車内は空席ばかりで、参加申し込みがなくツアーを中止することもあった。