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政府が6月上旬にまとめる「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案がわかった。経済安全保障の強化に向け、内閣府に「経済安全保障推進室」(仮称)を設置することなどを盛り込んだ。31日の経済財政諮問会議(議長・岸田首相)で示す。
原油増産働きかけ

原案では、11日に成立した経済安全保障推進法を着実に施行するため、速やかに基本方針を策定すると明記した。経済産業省や総務省など複数の省庁にまたがる問題を調整するため、内閣府に推進室を設ける。
半導体やレアアース、電池、医薬品といった重要な物資は、供給が途切れると経済活動への影響が大きい。安定した供給のため、基金の設置を含めた金融支援や助成に5000億円規模を充てることを盛り込んだ。先端技術を持つ企業への支援も検討する。
ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえ、エネルギー安全保障にも万全を期す。化石燃料のロシア依存度を下げるため、ロシア以外に多くの調達先を確保する。主要国と連携し、原油などの生産国に増産を働きかけるとした。
教育費の負担軽減
岸田首相が「新しい資本主義の最重要な核」と位置付け、3年間で4000億円規模を投じる「人への投資」にも重点を置く。
教育費の負担を軽減するため、学生が就職後、一定の年収に達した段階から授業料を返済する「出世払い」方式の新たな奨学金制度の創設を明記した。希望者が1週間の休日を3日間にすることを選べる「選択的週休3日制」は、子育てや介護での活用が考えられるとして、導入を後押しする。
企業には人材への投資を促すため、研修や多様性の確保の取り組みなど、決算書類に表れていない情報の開示を促す。首相は男女間の賃金格差の開示を企業に義務づける方針を表明しており、原案でも、開示ルールの見直しに取り組むとした。
現行の保険証、廃止目指す
医療・介護分野でデジタル化を進め、サービスの効率化や質の向上を図ることも盛り込んだ。その一環として、マイナンバーカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」の普及に力を入れる。
医療機関や薬局に対し、マイナ保険証を使って患者の情報を確認する「オンライン資格確認」のシステム導入を2023年4月から原則義務化することを明記した。24年度中をめどに、保険者が保険証を発行するかどうかを選べるようにする。将来は、現行の保険証の原則廃止を目指す。
政府は今年4月、マイナ保険証に対応する医療機関が受け取る診療報酬を手厚くし、患者の窓口負担が増えていた。今後は負担の縮小も含めて見直す方向で検討している。
骨太方針原案のポイント
▽経済安全保障の推進体制強化に向け、内閣府に「経済安保推進室」(仮称)を設置
▽半導体やレアアースなど重要物資の安定供給のため、金融支援や助成などの支援
▽男女の賃金格差是正に向け、企業の開示ルールを見直し
▽「出世払い」方式の新たな奨学金制度の創設
▽「マイナ保険証」の普及に向け、現行の保険証の原則廃止を目指す