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    走りたくなるクルマづくりの「原点」~トヨタ自動車

    中部支社 秋田穣

     サーキット特有の傾斜のきついカーブを、トヨタ自動車が半世紀前に販売した初の市販スポーツカー「トヨタスポーツ800」、通称「ヨタハチ」が駆け抜ける。

    スポーツカーの原点、ヨタハチ

    • 2017年9月20日読売新聞の全面広告
      2017年9月20日読売新聞の全面広告

     9月20日の読売新聞朝刊に掲載されたトヨタの全面広告は、往年のスポーツカーの白黒写真が大きくレイアウトされている。「すべては、この1台から始まった。」とのコピーも添えられ、クルマ好きには懐かしく感じられたのではないだろうか。

     それにしても、いったい何の広告なのか。その答えは、広告の右下にある。そこには「スポーツカーブランドGR始動」とあり、トヨタの新しいスポーツカーブランド「GR(ジーアール)」の広告であるとわかる。GRとは、世界ラリー選手権などに参戦する際のトヨタのチーム名であるGAZOO Racing(ガズーレーシング)の頭文字から取った名称だ。

     ここで、新たな疑問がわく。新しいスポーツカーブランドの広告に、なぜヨタハチなのか。広告を担当したトヨタGRマーケティング部の保田佳孝さん(34)は言う。「ヨタハチは半世紀前にスポーツカーとして世に出したクルマ。お客さまにファン・トゥー・ドライブを届けようという思いは、半世紀前も今も変わらない」。クルマは乗って楽しい乗り物――。そんな思いを伝えるために、あえてスポーツカーの原点であるヨタハチにスポットライトを当てたというわけだ。

    伝説のレースを走った車両を復元

    • 朽ち果てた姿で発見されたヨタハチ。このクルマをGRのコンセプトカー(試作車)としてよみがえらせた
      朽ち果てた姿で発見されたヨタハチ。このクルマをGRのコンセプトカー(試作車)としてよみがえらせた

     ヨタハチは1965年から4年間、約3000台だけ生産された。開発したのは、累計販売台数世界一の「カローラ」の初代開発責任者を務めた長谷川龍雄氏。当時としては珍しかった風洞実験を行って空気抵抗を極力抑え、ボディーの外板にアルミを使うなど軽量化を徹底した。1966年に開催された第1回鈴鹿500キロレースでは、ライバルに比べエンジンは非力だったが、軽く、空力に優れたヨタハチは無給油で走り抜き、1-2フィニッシュを決めた。

    • 復元されたヨタハチGRの試作車
      復元されたヨタハチGRの試作車

     広告に使ったヨタハチは、実はこの伝説のレースを走った本物のレース用車両を復元したものだ。数年前に偶然発見され、トヨタが譲り受けた時はボディーの腐食が進むなど傷みがひどく、とても走れる状態ではなかった。しかし、トヨタの技術者が部品を一つ一つ外してみると、過酷な耐久レースで勝つために、軽量化を進めた工夫の痕跡が随所に残っていた。豊田章男社長(61)が社長就任以来、言い続けている「もっといいクルマを作ろうよ」という思いが、そこに詰まっていた。

     折しも、水面下でGRのブランド展開をどう進めるか、社内で検討が進むまっただ中。朽ち果てたヨタハチをGRの試作車としてよみがえらせることが決まるまで、そう時間はかからなかった。

    3部作で「走りたくなるクルマ」

    • 広告を担当したトヨタの高須さん(左)と保田さん
      広告を担当したトヨタの高須さん(左)と保田さん

     実はこの広告には続きがある。

     読売新聞に掲載された9月20日、朝日新聞と日本経済新聞でもGRの広告が掲載された。ただし、写真はヨタハチではない。朝日には砂ぼこりを巻き上げながらGRなど6台のクルマが疾走する写真、日経にはヘルメットをかぶった豊田社長の写真を載せた。GR広告は、読売新聞に掲載されたヨタハチ版と合わせ3部作となっているのだ。GRマーケティング部室長の高須利治さん(50)は「(GRシリーズは)いつまでも走りたくなるクルマなんだということを何とか伝えたいと思った」と狙いを話す。

    • #058
      #058

     トヨタは2017年、創立80周年を迎えた。故障が少ないクルマづくりで世界の信頼を得てきた。世界初の量産ハイブリッド車「プリウス」発売以降は環境に優しいイメージも強い。もちろん、それはクルマづくりには重要なことだが、何かが足りない。

     ヨタハチの広告には、こんな一節がある。

     <燃費が良くて、ハンドリングに優れ、長時間乗っても疲れないクルマ。レースに勝てる品質と、誰もが手が届く価格を兼ね備えたクルマ。>

     ヨタハチが追い求めた、走りたくなるクルマづくりの「原点」。新時代のスポーツカーにどう受け継がれるのか、注目したい。

    (中部支社 秋田穣)

    ◆トヨタ自動車
     1937年に豊田自動織機製作所(現・豊田自動織機)の「自動車部」が分離して設立され、2017年に80周年を迎えた。「ルマン24時間」や「世界ラリー選手権」に参戦するなど、モータースポーツにも力を入れている。本社は愛知県豊田市。2017年3月期の連結売上高は約27兆6000億円。連結従業員数は約36万4000人(2017年3月末)。ウェブサイトは こちら
    2017年12月21日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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