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    8年目の「声かけ、サポート」~JR東日本

    経済部 田島萌
    • 2018年9月3日付読売新聞朝刊の全面広告
      2018年9月3日付読売新聞朝刊の全面広告

     「お手伝いしましょうか」「大丈夫ですか」「May I help you?」

     2018年9月3日付の読売新聞朝刊に掲載されたJR東日本の全面広告では、障害者や高齢者、外国人など、駅の利用時に困っている人たちを手助けする「声かけ」の例が、柔らかなタッチのイラストで紹介されている。

     全面広告は、JR東を始めとする全国の交通事業者76社局が共催、6団体が協力する「『声かけ・サポート』運動強化キャンペーン」(18年9月3日~10月31日)を紹介した。キャンペーン中は、参加する各社局の駅員らがより積極的に声かけを行っていくことはもちろん、周囲の乗客にも助け合いを呼びかけた。

     全面広告と同じ絵柄のポスターは各地の駅などに掲示された。また、電車内の液晶画面でキャンペーンのCMを流しているところもあった。具体的なセリフを添えて紹介することで、声をかけることへの心理的なハードルを下げる狙いがあるという。

    弱視の人も見やすい「バリアフリー」デザイン

    • 広告を担当した柏谷さん(左)と持立さん
      広告を担当した柏谷さん(左)と持立さん

     キャンペーンは11年度から始まり、今年で8年目となる。当初はJR東が独自に行っていたが、規模が年々拡大しており、18年度からは全国の交通事業者にも広がった。サービス品質改革部の柏谷(かしわや)正剛(まさたか)さん(38)は「最寄り駅にとどまらず旅先でも同じポスターを目にすることで、キャンペーンをより印象付けられるはず」と話す。

     実は、このイラストには工夫が凝らされている。弱視の人でも見やすいように、イラストの輪郭を黒く縁取っており、広告のデザイン自体が「バリアフリー」になっているのだ。

    • キャンペーンの初日には、駅員が視覚障害者を誘導するデモンストレーションが行われた(JR東日本提供)
      キャンペーンの初日には、駅員が視覚障害者を誘導するデモンストレーションが行われた(JR東日本提供)

     キャンペーンの初日となった9月3日には、JR東京駅で声をかける大切さを考えてもらう催しが開かれた。駅員が視覚障害者に声をかけて目的地まで誘導するデモンストレーションを披露したほか、聴覚障害者を案内する時などに使う小さな「筆談ボード」を駅の利用者にも配布した。ホワイトボードとして家庭でも使ってもらうことを通じ、聴覚障害や声かけについて身近な問題として捉えてもらおうという狙いだ。

     全面広告を出すのは昨年度に続き2回目となる。キャンペーンへの好意的な反響もあり、広告を見た交通事業者や団体から「来年度から参加したい」という申し出もあったという。

    「息長く発信を続けていく」

    • キャンペーンで配布された筆談ボード
      キャンペーンで配布された筆談ボード

     ただ、「鉄道会社が乗客に声かけをお願いするのはおこがましい」という批判も一部から寄せられた。

     各地では、ホームドアのない駅で視覚障害者が転落して電車と接触する事故なども発生しているほか、訪日客が不慣れな旅先で電車の乗り換え方などが分からず困るケースも起きている。

     多くの人たちが利用する駅で、重大な事故を防ぎ、誰もが快適に公共交通を利用するためには乗客の協力は欠かせない状況だ。声かけやサポートの輪をより広げていく必要があり、キャンペーンを統括するサービス品質改革部の持立(もちたて)雄也(ゆうや)課長(41)は「息長く発信を続けていくことで、誰もが暮らしやすい社会につながるはず」と意義を強調する。

    • #067
      #067

     JR東も、自社での取り組みを加速させている。従業員を対象に、基本的な声かけの方法を示したハンドブックを配布するなど指導や教育を行っている。また、社員らにサービス現場での介助スキルや心構えを学んでもらおうと、民間資格「サービス介助士」の取得を勧めており、すでに駅員や運転士、設備関係の社員など計約1万3000人が実技講習などを受けて資格を取得したという。

     20年の東京五輪・パラリンピックの開催まであと2年となった。障害者や外国人など、様々な人たちがともに安心して過ごせる社会づくりが急務となっている。柏谷さんは「声かけに正解はない。自分の大切な人が困っていたらと想像して、声をかけてみてほしい」と呼びかけている。

    ◆東日本旅客鉄道(JR東日本)
     1987年、前身となる国鉄の分割・民営化により誕生した。鉄道の営業エリアは主に東北、関東、甲信越となる。2018年4月1日現在、駅数は1667駅で、営業する路線の距離は7457.3キロメートルに及ぶ。1日あたり1万2000本を超える列車が走り、約1770万人を運んでいる。
     鉄道事業のほかにも幅広く事業を手がけており、近年では、主要駅に併設した「駅ナカ」の商業施設の開発にも力を注ぐ。このほか広告業、旅行業、金融業なども手がける。
     2018年3月期連結決算の売上高は2兆9501億円。本社は東京都渋谷区。社員数は5万4880人(18年4月1日現在)。JR東日本のウェブサイトは こちら
     

    2018年11月08日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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