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    【人財編】人事迷走、官邸主導で決着

    人財編(1)

    「非・森友」布陣消え「本命」に

     霞が関の省庁は、人材がすべてだ。生産設備や販売網はなく、「人が唯一の財産」といえる。人事や採用が組織の生死を分けるといっても過言ではない。「新生・財務省」の行方を、その人間模様から占う。(敬称略)

    • 就任に際して記者の質問に答える岡本財務次官(7月27日、東京都千代田区霞が関で)=林陽一撮影
      就任に際して記者の質問に答える岡本財務次官(7月27日、東京都千代田区霞が関で)=林陽一撮影

     財務省庁舎2階の次官室。3か月ぶりの(あるじ)は、「本命」とされてきた岡本薫明(しげあき)主計局長(1983年入省)だった。混乱の末、今回の人事は内示も受けないまま発令される幹部が続出する異例の展開となった。

     学校法人「森友学園」に絡む文書の改ざん問題で、岡本は官房長時代の責任を問われ、「文書厳重注意」の処分を受けた。懲戒処分よりは軽く、霞が関のルール上、昇格は可能だ。

     そこをどう考えるかが、次官人事が迷走した最大のポイントだった。7月27日の記者会見で、岡本の起用の妥当性を問われた麻生太郎財務相は、こう切り返した。

     「忘れんでください。人事権はあなたじゃなく、俺にある」

     いら立ちにも似た麻生の言葉の裏には、今回の人事が必ずしも「本意」ではなかったことがにじむ。

     セクハラ問題で前次官が辞任した4月24日からの3か月。麻生の心中は揺れ続けた。側近の浅川雅嗣財務官(81年)、星野次彦主税局長(83年)、再び浅川――。麻生が首相官邸に打診した次官候補は目まぐるしく変わった。

     浅川も星野も森友問題に関わっていない。組織再生に向けて麻生が描いたのは「非・森友」の布陣だ。本来なら次官に昇格する岡本は1年間温存する。それが、国会で激しい追及を受けた麻生の腹づもりだった。

     ところが、人事権を握る官邸は、浅川や星野に登板させなくても事態を乗り切れると踏んだ。与野党対決の構図となった6月10日の新潟県知事選で勝利。森友問題などで落ち込んだ内閣支持率も持ち直していた。麻生の懸念は官邸には杞憂(きゆう)に映った。最後は麻生も「岡本次官」をのんだ。

    • 主計局長に就任した太田充氏。理財局長として森友学園問題の国会答弁にあたった(4月9日)
      主計局長に就任した太田充氏。理財局長として森友学園問題の国会答弁にあたった(4月9日)

     もう一つのポイントが、森友問題で矢面に立った太田充理財局長の処遇だ。太田は岡本の入省同期。主計局長に回るのが定石だが、麻生は太田の続投を探った。万が一、森友問題で新たな火種が見つかれば、太田をおいて他に火消しに回れる人材はいない。

     そんな麻生の考えとは裏腹に、官邸は太田の主計局長就任を望んだ。森友問題で率直ながらも隙をみせない国会答弁を貫き、政権を守った「功労者」として太田を遇したがった。

     陰で動いたのは、財務省出身で、今は「官邸官僚」として辣腕(らつわん)を振るう古谷一之官房副長官補(78年)だ。

     キャリア官僚なら誰もが次官を目指す。主計局長は「次の次官」が確約されてきたポストだ。

     「太田にも報いてやりたい」。消費税の使途変更で太田とともに汗をかいた古谷は、周囲に漏らした。古谷は上司の杉田和博官房副長官らを通じ、麻生に「岡本次官―太田主計局長」の実現を働きかけた。

     「長年この職場で働いてきた者として、組織の信頼回復に全力を挙げたい」

     岡本は7月27日、記者団に抱負を語った。迷走の果ての「既定路線」。その成否に、組織の浮沈がかかる。

    Q 財務次官特徴は A 多い東大法・地方出身者

     Q 財務次官とは。

     A 財務省で大臣ら政治家を除いた事務方トップだ。正式には「財務事務次官」と呼ぶ。慣例として、国会対応を担う官房長や主計局長を経て、入省35年目前後に就任する。7月27日、次官に就任した岡本薫明氏も同様のコースをたどった。任期は1年の場合が多い。

     国際金融部門のトップである財務官と、国税庁長官は「次官級」とされる。これに主計局、主税局、国際局、理財局、関税局の5人の局長と官房長らが続く。

     Q 次官の経歴の特徴は。

     A 2001年の財務省発足後、岡本氏が15代目となるが、4代目の藤井秀人氏(京大法)、13代目の佐藤慎一氏(東大経)を除くと、全員が東大法学部の出身だ。

     旧大蔵省時代は、東大以外の出身で次官になった人物として、池田勇人元首相(京大法)が知られる。愛媛県出身の岡本氏をはじめ、地方出身者が多いのも特徴だ。

     インサイド財務省人財編(2)はこちら

    2018年08月14日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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