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    【人財編】不祥事と激務、採用苦戦

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    人財編(2)

    「働き方重視」学生の意識変化

     「外資系コンサル躍進」。こんな見出しが東京大学新聞7月3日号の1面トップに躍った。今春の学部卒業生の就職先だ。アクセンチュア20人。マッキンゼー・アンド・カンパニー11人。欧米に本拠を置く外資系の名門コンサルティング会社が並ぶ。

     東大が最大の人材供給源となってきた中央省庁はどうか。最多は国土交通省の16人。財務省は11人で前年より6人減り、首位から6番目に後退した。長年、ライバル視してきた経済産業省の14人を下回った。

     顧客や投資家から評価され続ける企業と違い、役所は採用がほぼ唯一、市場原理にさらされる場だ。

     外資系に比べると薄給な官僚はハンデが大きい。公務員試験などの受験を指導する伊藤塾(東京)によれば、「最近では保護者が霞が関への就職を反対するケースも珍しくない」。

     わけても財務省には強い逆風が吹きつける。

     来春に中央省庁への就職を目指す学生の最終面接となる「官庁訪問」が解禁されたのは7月4日。森友学園問題の余波で、昨夏の採用戦線から地盤沈下が進み、今夏は一段と苦戦を強いられた。関係者によると、志望者は前年より大幅に減ったという。

     財務省が敬遠されるのは不祥事だけが理由ではない。「激務」や「強固な組織力」といった体質も響いている。

     「財務省が最強官庁だとは知っているが、長時間の勤務もいとわない体育会気質だと聞く。相対的に個人の裁量に任せてくれるイメージがある経産省にひかれる」。東大の男子学生の考え方は、広がりをみせてきた。

     開成や灘、麻布といった難関高校から東大に入り、卒業後はキャリア官僚として霞が関を闊歩(かっぽ)する。中でも予算査定の権限を盾に他省庁ににらみを利かせる財務官僚は一握りの「超エリート」――。そんな東大生の意識は様変わりしている。

     「霞が関が日本を動かしているという幻想がなくなり、仕事をより現実的に見るようになった」。東大で政策分析ゼミを主宰する瀧本哲史・京大客員准教授の解説だ。「財務省志望の減少は、不祥事よりも働き方が重視されている結果だ」(東大2年、男子学生)。若い世代の労働意識の変化とも無縁ではない。

     7月18日、東京・新橋の居酒屋。財務省から内々定を得た学生約20人を囲む懇親会が催された。

     「財務省の本来の役割は決して変わることはない」「単に予算要求を受けて査定するのではなく、責任を持って政策をまとめ上げる立場にあると思う」。学生からは仕事への意欲を示す言葉が相次いだ。「財務省は窮地に立たされ、採用は正直、心配だった。使命感を持った優秀な人材が集まってくれたことをうれしく思う」。職員が語りかけると、学生たちは拍手で応じたという。

     「われら富士山、他は並びの山」。財務官僚の強烈なエリート意識を示す言葉は過去のものになりつつある。日本のために果たすべき役割は何なのか。来春から働く若者たちの胸に「真の使命感」が刻まれたとき、組織の再生に向けた扉も開かれる。

    Q キャリア官僚になるには A 総合職試験合格、省庁ごと選抜

     Q キャリア官僚になるには。

     A 第一関門は、人事院が行う「国家公務員総合職試験」に合格することだ。筆記テストや面接などがある。今年は4月下旬から6月中旬にかけて行われ、1万9609人の申込者に対して合格者は1797人。10・9倍の狭き門だった。

     大学別では東大の329人がトップで、京大(151人)、早大(111人)が続いた。1992年、当時の宮沢首相が東大卒偏重を改めて多様な人材を採るよう指示し、徐々にではあるが他大学の出身者が増えている。女性の合格者も増加傾向にあり、今年は過去最高の27・2%に達した。

     Q 総合職試験に合格すれば採用されるのか。

     A 合格しても必ず採用されるわけではない。合格者は「官庁訪問」と呼ばれる面接試験に進み、省庁ごとに選抜される。期間は約2週間で、原則として3省庁まで訪問を希望できる。実際に採用されるのは、例年、総合職試験の合格者のうち3割ほどだ。今年の訪問解禁日は7月4日で、7月18日から内々定が出された。

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    2018年08月15日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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