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    【人財編】転職先、広がる業種

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    人財編(4)

    IT・コンサルでも公僕気質

     東大法学部を卒業した2011年春。山内絢人(けんと)(30)は、霞が関でもひときわ古い財務省庁舎の門をくぐった。今、東京・京橋にある高層ビルの19階で働く。勤務先は仮想通貨関連のベンチャー企業だ。今年3月に転職した。

     「財務省に不満があったわけではない。だが、自分の力でやりたいことをやった方が、世の中にインパクトを与えられる」

     財務省では国際局を振り出しに、主計局も経験した。転機は、入省6年目の英国留学。金融とITを融合する「フィンテック」に触れたことだ。今の会社では経営企画を担当するが、将来は起業を思い描く。

     インターネット通販大手のアマゾンジャパンに昨年転じたのは、07年入省の篠原健(33)。国際局の課長補佐で役所を「卒業」した。

     課長補佐は現場の指揮官だ。裁量は大幅に増える。

     しかし、篠原の目には「前なら係長がやっていたような仕事を、今は課長補佐がやっている」と映った。しかも、課長補佐の期間は長びく傾向が強まり、課長昇進まで10年程度待つこともめずらしくない。

     「財務省に残れば、いずれ大きな仕事ができる」。そうも考えた。悩み抜いた末、かねて「国境を超えて社会インフラを提供している」と気になっていたアマゾンに飛び込んだ。財務分析を通じた戦略立案が現在の業務だ。

     かつて財務官僚の転身先は、学者や弁護士、あるいは政界進出が相場だった。最近は、IT企業や外資系コンサルティング会社など多様化が進む。

     自主退職者の会――。財務省から民間企業に転じた約20人が年に1回ほど集う。「民間の流儀」に戸惑い、不安を感じる者同士が情報交換をするうちに、「会」に育った。

     「頭でっかちでビジネスに向かないのではないか」。そんな色眼鏡でみられた経験を皆がもつと、事務局の野尻明裕(49)=1991年入省=は解説する。野尻は30代半ばで中堅のノンバンクに転じ、今は米国系PR会社の日本法人社長を務める「転職成功者」だ。

     自身を含め、霞が関で培った公僕の気質は抜けないという。「皆に共通しているのは、民間にいても政策や公的なものに関心があること」。利潤を追うだけでなく、社会に奉仕したい。その思いは変わらない。

     去る人がいれば、来る人もいる。

     在英国日本大使館の1等書記官片岡修平(34)は12年、社会人採用で財務官僚になった。京大卒業後に入ったのは外資系のボストンコンサルティンググループ。投資ファンドを経て、官僚の道を選んだ。

     「一部の企業がさらに豊かになることを助けるより、地域を元気にするプレーヤーが必要だと思った」

     渡英前の今年6月まで在籍したのは内閣官房の日本経済再生総合事務局。新ビジネスを生み出すための規制緩和に取り組んだ。「古い法規制を見直さないと、日本は世界で戦えない。政府の役割や存在感は増している」。事業者へのヒアリングを繰り返し、政策をまとめた。「現場にどんどん飛び込んでいく姿勢は、民間出身者ならではだ」と、上司の評価は高い。

     転職して外部で経験を積み、古巣に戻ったケースもある。堀本善雄(52)=90年=は、金融庁などでの勤務を経て、08年に米金融コンサルタント会社に転職。13年、金融庁に再雇用され、監督局で総務課長を務める。

     縦糸がほつれても横糸が絡んで補強する。組織の代謝は、たゆまず進んでいく。(敬称略)

    Q 新人職員の意識は A 「定年まで」46%

     Q 国家公務員の中途退職の現状は。

     A 働き盛りの25~39歳の一般行政事務職をみると、退職者(人事交流による退職を含む)は2011年度の1651人から減少してきたが、14年度には増加に転じ、16年度は1685人に達した。人手不足による転職市場の活発化などが背景にあるとみられる。

     財務省は個別には退職者数を明らかにしていない。「昔から一定数の退職者はいるが、最近増えているわけではない」(幹部)という。

     Q 新人職員の意識は。

     A 定年まで勤め上げるという考え方は減っている。人事院が今春、主にキャリアとして採用された新人職員にアンケート調査を行ったところ、「定年まで公務員を続けたい」という回答は46%で、前年から8ポイント減った。「いつかは転職を考えたい」と答えた職員は全体の32%だった。

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    2018年08月17日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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