文字サイズ

    【論争編】財政決定の力学、激変

    インサイド財務省 論争編(1)はこちら

    論争編(2)

    諮問会議に加え「未来投資」

     構造改革のエンジン。首相が議長を務める経済財政諮問会議は、小泉内閣(2001~06年)の時代にそう呼ばれ、隆盛を誇った。

     経済界の重鎮や学識経験者も加わる論争の場。そこで、「改革なくして成長なし」のスローガンが郵政民営化などの政策として実を結んだ。

     小泉内閣の誕生に3か月先だって発足した諮問会議は「財務省の予算編成権を低下させ、財政制度等審議会の影響力もそぐ。そのために設けられた組織」。諮問会議を所管する内閣府の幹部が振り返るように、予算編成の重心を財務省から外に移すための舞台装置でもあった。

     だが、「最強官庁」だった財務省は転んだままではなかった。小泉の秘書官として送り込まれた丹呉泰健・元次官(1974年入省)を筆頭に、エース級の職員が首相官邸や内閣府で舞台回しを差配するようになる。

     「財務省の力がそがれたのは事実だが、諮問会議に影響力を行使しようと、人材の投入を含めて最も早く動いたのも財務省だった。非常に賢いと思った」

     経済財政相として諮問会議を担当した竹中平蔵は述懐する。小泉は消費増税こそ封印したが、新たな国債の発行を努めて低く抑えた。財務省の粘り勝ちだったともいえる。

     そうした霞が関の力学を一変させたのは、経済成長を何よりも重視する安倍内閣だ。

     9月の自民党総裁選で連続3選した安倍首相は「全世代型社会保障改革」を掲げ、実務を事実上、経済産業省に託した。論争の場は、従来の諮問会議に、成長戦略をまとめる未来投資会議も加わった。

     未来投資会議もまた、首相が議長を務める。前身の産業競争力会議の頃から、「官邸官僚」で構成される内閣官房の「日本経済再生総合事務局」が実務を取り仕切る。これまで経産省出身の菅原郁郎(81年)らが主軸となってきた。菅原は経産省で、経済産業政策局長、次官と昇進したが、内閣官房の仕事もつづける異例の役人人生を歩んだ。

     菅原の後をいま、経済産業政策局長の新原浩朗(84年)が担う。日本経済再生総合事務局の事務局長代理補も兼ね、官邸にほど近い内閣府庁舎にも席を置く。

     霞が関が今、最も注視するのは、今井尚哉首相秘書官―新原のラインだ。今井は経産省で新原の2期先輩にあたる。ともに安倍の信認が厚く、働く高齢者を増やすことなどで社会保障を支える仕組みを整えていくとみられる。経産相の諮問機関である産業構造審議会も、予防医療の充実に向けた議論に乗り出した。経産省が主導する論争の場は厚みを増してきた。

     内閣のキーマンと目されるのは、諮問会議と未来投資会議の両方を取り仕切る茂木経済再生相だ。茂木は米国との貿易協議で、自動車への追加関税を当面回避するなど、その手腕に対する評価が高まっている。10月の内閣改造で「全世代型社会保障改革担当」の閣僚も兼任することになった。

     茂木を支える秘書官の一人に、財務省出身でホープとの呼び声が高い河本光博(98年)がいる。河本もまた、かつての丹呉らのように、出向元の主張を政策に反映させることができるのか。秋の深まりとともに、財務官僚一人ひとりの役割は重くなる。(敬称略)

    Q 経済財政諮問会議とは A 予算編成の基本姿勢示す

     Q 経済財政諮問会議とは。

     A 首相が議長を務め、副総理(財務相)、官房長官、経済再生相らのほか、経済界出身者らの民間議員で構成される。2016年に設けられた未来投資会議も同様だ。夏休みや選挙などの時期を除き、月に1~2回程度、首相官邸で開催される。

     民間議員はほぼ毎回、政府への提言を提出する。「民間議員ペーパー」と呼ばれるが、その下地は内閣府の職員が政府内で調整して作っている。今後の議論の方向性を示すことが多く、政府内では注目度が高い。

     Q どのように政策を打ち出すのか。

     A 毎夏、「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を取りまとめ、年末の予算編成に向けた基本姿勢や、中長期的に取り組む政策課題を示す。

     安倍内閣では同じ時期、成長戦略、規制改革実施計画、まち・ひと・しごと創生基本方針も閣議決定する。これらは「政府4計画」と称されるが、重複している内容も多い。

     インサイド財務省 論争編(3)はこちら

    2018年10月17日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    おすすめ
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP
    大手町モールのおすすめ