<速報> 18年の中国GDP6・6%増、28年ぶり低水準
    文字サイズ

    【財投編】官民ファンド、統治不全

     財投編(1)

    高額報酬、蜜月から確執へ

     「第2の国家予算」といわれる財政投融資(財投)。その資金の差配は財務省の隠れた力の源泉であり、2019年度の計画づくりが大詰めを迎えている。重要な資金の配分先となった官民ファンドを巡る攻防から、財投を追う。(敬称略)

     総額10兆円を超す2019年度の財政投融資をどう配分するか。

     その見極めの場となる7日の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)・財政投融資分科会。政府に1600億円の追加出資を求めるため、経営方針を説明するはずだった産業革新投資機構(JIC)の幹部の姿はなかった。

     政府と対立し、それどころではなくなったのだ。

     官民ファンドと大株主である政府の確執。最大で年1億円を超えるJIC経営陣の報酬体系が、その発端だった。

     11月24日。経済産業次官の嶋田隆(1982年入省)は、高額報酬を認めないとJIC社長の田中正明(65)に告げた。田中は会談中に席を蹴り、その場を辞した。

     12月3日。「社長との信頼関係が毀損(きそん)され、国として(投資枠である)2兆円の資金を任せるのが困難な状況だ」。経産省産業創造課長の佐々木啓介(93年)が記者会見に臨み、公然と田中を批判するに及ぶ。

     「役所としては異例中の異例の対応だ。経産省は田中氏を辞めさせようとしている」。財務省幹部はそう受け止めた。

     もともとJICと経産省は蜜月関係だった。

     「世界一流の金融や投資のプロが投資活動を行う態勢が整備された」。9月。JICの設立記者会見で、田中は力強く宣言した。田中は三菱UFJフィナンシャル・グループで副社長まで務め、米国事業に貢献した国際派バンカーだ。ほかにも投資会社や銀行の出身者が役員に名を連ねる。

     「お任せできるプロに入っていただいた」。田中らの人選が決まったとき、経産相の世耕弘成は大きな期待を寄せた。

     蜜月が終わったのは、高額報酬を認めていた経産省が批判的な報道を受け、「国会対応がもたなくなる」(関係者)との見方に傾いたからだ。高額報酬を認めない代わりに、世耕は閣僚給与1か月分を自主返納し、嶋田を厳重注意処分とすることで事態の収拾を図った。嶋田も1か月分の給与の30%を自主返納することになった。

     「異形」ともいえるJICの組織形態も、今回の問題と無縁ではない。

     前身の旧産業革新機構は、2009年から15年間の時限組織として設立された。財投を所管する財務省理財局長だった勝栄二郎(75年)らが08年にまとめた構想が下敷きとなり、企業の先端技術に資金を供給してきた。

     期限切れを待たず、旧機構は産業競争力強化法の改正を経てJICに衣替えされた。海外の製薬会社などへの積極投資を掲げ、高いリターンを狙う。その原資は、政府保証を武器に金融機関から調達した資金だ。

     官民ファンドといってもJICの実態は政府系ファンドに近い。

     株式会社であるJICは、「財務大臣」が約95%を出資する。つまり実質的な大株主は財務省で、事業を認可するのは経産省という「二重構造」だ。

     残りは政府系金融機関の日本政策投資銀行や、経団連に加盟する3メガバンクやメーカーなどが少額ずつ出資する。民間に広く薄く協力を求める「奉加帳方式」でJICは生まれた。

     「官と民」の対立劇の前、霞が関では「官と官」の間で不信感が高まっていた。

     「国の金を何だと思ってるんだ」。高額報酬案を知った財務官僚たちはざわついた。JICを設立するための法案が国会で審議されていた今春、理財局は学校法人「森友学園」の問題に追われていた。

     世界で幅を利かせる中国、シンガポールなどの政府系ファンドについて、財務省には「先進国がもつべきではない」という意見が多い。リスクが高い投資に失敗すれば、最後は国民負担となることも理由だ。

     「米国では(交渉中に)席を立つというのは日常茶飯事だ。昔の仲間は『田中が席を立つのを1日3回くらいみたことがある』と言っている」。田中は記者団にそう言い放った。

     7日。嶋田は、JIC取締役会議長の坂根正弘(77)=コマツ相談役=と善後策を話し合った。だが、進展はみられなかった。

     官と民の「同床異夢」が招いたといえるガバナンス(企業統治)の不全。それは「第2の予算」のあり方にも関わる。

    Q 財政投融資とは A 大規模事業、ファンドに資金

     Q 財政投融資とは。

     A 「財政融資」や「産業投資」などの総称だ。2018年度当初計画では約14・5兆円が計上された。

     財政融資は、政策的な必要性はあるが、民間企業だけでは資金を用意できない大規模な事業に、政府が長期、低金利でお金を貸し出す。リニア中央新幹線や奨学金などに使われている。

     産業投資は、NTTや日本たばこ産業(JT)など政府が保有する株式の配当金を、官民ファンドなどへの出資に回す。

     Q 一般会計予算と、どう違うのか。

     A 補助金などの予算は、基本的には戻ってこない「渡し切り」だ。一方、財投による融資や出資は、お金が後で戻ってくることを前提としている。

     2003年、当時の塩川財務相は「母屋はおかゆなのに、離れはすき焼きを食べている」と述べ、歳出削減に努める一般会計を「母屋」に、潤沢な財投などを活用した特別会計を「離れ」に例えて批判。財投の規模縮小が進められることになった。

    2018年12月18日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    おすすめ
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP
    大手町モールのおすすめ