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世界人口「下振れ」リスク…経済部次長 五十棲忠史

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コロナ禍 少子化加速

 世界の主要国で、少子化が進んでいる。女性1人が生涯に産む子供の人数を示す合計特殊出生率は、いずれも低下傾向にある=《1》=。新型コロナウイルスの感染拡大による先行き不透明感が少子化を加速させ、持続的な経済成長ができなくなる懸念が強まっている。

国が消滅?

 世界各地で、少子化の進行を印象付ける出来事が増えている=《2》=。

 深刻なのは韓国だ。出生率は、2018年から3年連続で「1」を下回っている。20年の数字は、過去最低を更新する0・84。首都ソウルなど、都市部での少子化が顕著になっている。

 若い世代の雇用が不安定になっており、未婚化・晩婚化が進んでいることが最大の要因とされる。サムスン電子など、高い給与が期待できる職業に就くための競争が激しくなっていることから、1人の子供に教育費を集中させる傾向も強まっている。

 このまま少子化が続けば、韓国の人口は、2100年までに半減するとみられる。将来的には、国が消滅する恐れすら取りざたされている。ニッセイ基礎研究所の 金明中キムミョンジュン ・主任研究員は「若者の安定的な雇用を確保するとともに、子育て支援に関連する予算を持続的に増やしていく必要がある」と指摘する。

3人まで容認

 世界最多の人口を誇る中国は5月、夫婦1組につき子供2人までとしてきた産児制限を、3人に緩和する方針を示した。

 中国は、人口を抑制するため、1979年から行ってきた「一人っ子政策」を、2015年末に打ち切った。それから5年半で、さらなる緩和に踏み切った。急速に進む少子高齢化が、持続的な経済成長を阻害する要因になりかねないとの危機感があるためとみられる。

 コロナ禍に見舞われる前の17年ごろから、中国の出生数は減少傾向が続く。20年は、これが加速した=《3》=。中国国家統計局によると、20年の出生数は約1200万人で、19年(1465万人)と比べ約18%も少なかった。中国政府は、少子化を食い止めるため、保育サービスの充実や、教育費負担の軽減などに取り組んでいる。

G7は長期化

 先進国は、少子化が長期化している。

 経済協力開発機構(OECD)によると、先進7か国(G7)の出生率は、いずれも中長期的に人口が安定する「2・0」を下回っている。7か国のうち、日本、イタリア、カナダの3か国は、1・5にも届いていない。

 比較的、高い出生率を維持してきた米国とフランスでも、近年では低下傾向にある。

 コロナ禍に直面した20年、米国の出生数は前年よりも4%少ない約360万人だった。とりわけ、10代と20代の女性による出産が落ち込んだという。

 フランスは、20年の出生率が1・8だった。19年に比べ、0・03ポイント低下した。「パックス」と呼ばれる事実婚制度を整えることなどにより、08~14年は2・0前後の水準をキープしていたが、15年ごろからじりじりと下がっている。

暮らし変化

 国際社会はこれまで、人口増に食料生産が追いつかなくなるリスクを警戒してきた。

 例えば、食料価格が高騰していた2008年に開かれた北海道洞爺湖サミットでは、世界の食料安全保障に関する首脳声明が発表された。食料不足を回避するため、「食料生産を促進し、農業への投資を増加させることの重要性を完全に認識する」と書き込まれた。

 国際連合は19年、世界の人口は、2100年までに約109億人まで増えるとの予測を示した。現状の約1・4倍の水準に相当する。予測が上振れした場合、156億人まで増える可能性もあるとした=《4》=。

 国連は、下振れした際の見通しとして「2100年時点の人口が73億人になる」との数字も示している。54年ごろ約89億人で頭打ちとなり、減少に転じていくというシナリオだ。

 世界各地で起こっている現象は、「下振れ」ルートをたどる確率が高まっていることを示唆しているようにみえる。国連の推計によると、人口増が続くアフリカは直近5年間の出生率が「4」を上回っているものの、アジアや中南米は、かろうじて「2」を上回っているにすぎない。

 新型コロナの感染拡大で、人々の暮らしや考え方は大きく変化した。世界が警戒しなければいけないシナリオは、「爆発的な人口増」から「急速な少子化」に転換したと指摘する識者も増えている。

生産性カギ

 出生率の低下は、一人一人が選んだ人生の集合体であり、政策で押し戻すのは限界がある。

 少子化が進んでも、すぐに経済への影響が出てくるわけではない。だが、出生数の落ち込みは、将来の労働力人口の減少につながる。そのスピードがあまりにも速すぎると、経済成長を続けるのが難しくなり、社会保障制度など、国の仕組みを維持できなくなる。

 第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミストは「コロナ禍の影響は、21年の出生率をさらに下押しする形で表れるだろう。人口減でも低成長に陥らないためには、生産性の向上が重要だ」と指摘する。

 日本は、生産性を示す代表的な指標である1人あたり国内総生産(GDP)が1995年ごろから伸びていない=《5》=。少子化による経済の落ち込みを食い止めるためにも、「稼ぐ力」を高めることが急務となっている。

  ◆合計特殊出生率 =1人の女性が生涯に産む子供の数の推計値。人口が長期的に一定数で推移する「人口置換水準」は、日本の場合、2.07程度とされている。

  ◆1人あたり国内総生産(GDP) =その国の生産性や、生活の豊かさを示す指標。GDPを人口で割って算出する。国際通貨基金(IMF)によると、日本の20年の推計値は、約4万ドル(約440万円)。首位はルクセンブルクで約11万7000ドル。中国は約1万ドル、インドは約2000ドルとなっている。

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2154329 1 グローバルエコノミー 2021/06/25 05:00:00 2021/06/25 05:00:00 2021/06/25 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210624-OYT8I50085-T.jpg?type=thumbnail

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