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◆感染抑止が経済回復の近道だ◆
社会に広がる感染症の不安を解消し、経済を回復させる上で、政治が果たす役割は大きい。
これ以上の
臨時国会がきょう閉会するのにあわせ、菅首相が記者会見した。新型コロナウイルス対策について「国民の命と暮らしを守る。これが最大の責務だ」と強調した。
首相官邸での記者会見は、9月の就任時以来だ。首相は折に触れて、立ち話の形式で感染症対策について説明してきたが、国民に危機への対処方針を十分に発信してきたとは言えない。
◆トップの発信が不可欠
国難とも言われる状況を克服するには、行政のトップが自らの言葉で、明確な指針とメッセージを出す必要がある。積極的に訴える機会を増やしてもらいたい。
新型コロナの新規感染者数や重症者数は、過去最多の水準にある。菅政権は、感染抑止で後手に回っていると言わざるを得ない。
政府は、「3密」の回避やマスク着用の徹底などを国民に呼びかけてきた。一方、政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は「個人の努力に頼るステージは過ぎた」と述べている。行政の強力な対応は急務だ。
分科会は、「Go To トラベル」の一時停止を提言した。だが、国は大阪市と札幌市を目的地とする旅行を除外したものの、東京都を発着する旅行については、高齢者などの利用自粛を呼びかける微修正にとどめている。
患者の急増を受け、大阪府は不要不急の外出を控えるよう要請した。東京都も注意を促している。飲食店などに営業時間の短縮を呼びかけた自治体は多い。
国が移動を推奨する一方で、自治体が自粛を求める構図は、違和感が拭えない。そもそも「Go To」事業は、感染収束後に始める予定だったのではないか。
経済再生と感染拡大防止の両立を図ることは肝要だ。とはいえ、流行が拡大する中、景気を刺激し続ける手法は強引に過ぎよう。
政府は、「トラベル」を6月まで継続する方針だ。飲食業を支援する「Go To イート」の予算も改めて確保するという。
事業の仕組みを再考して、柔軟に中断や再開ができるよう、制度を練り直してはどうか。
◆需要喚起策の修正必要
緊急事態宣言を発出すれば、経済に多大な影響を与えることは経験済みだ。そうした事態を回避するためにも、当面、感染抑止に軸足を移すことが不可欠である。
感染の危険の中で、医療従事者は懸命に治療にあたっている。負担を軽減するには、感染者を減らすしかない。政府は医療現場の実情を重く受けとめてほしい。
首相は記者会見で、臨時国会の成果を強調した。
成立した改正予防接種法は、新型コロナのワクチン接種を国民の努力義務と位置づけ、費用を国が負担することなどを定めている。今後、身近な地域で円滑に接種できる態勢を整えたい。
英国の欧州連合(EU)離脱後も、日英間の関税率の上昇などを回避する包括的経済連携協定(EPA)も承認された。
日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命を拒否した問題については、首相は「会議に求められる役割を踏まえて、適切に判断した」と述べるにとどめた。
首相の任命は「形式的」で、実際には推薦通り決まるとした過去の政府答弁との食い違いは、依然として説明していない。
政府と自民党は、安全保障政策に批判的な学術会議の提言を問題視し、体制を見直そうとしているが、会議のあり方と任命拒否は別の問題だろう。首相は判断の理由を明らかにせねばならない。
◆通常国会で憲法論議を
安倍前首相の後援会が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡っては、安倍氏側が会費を
安倍氏が国会で、後援会の支出はないと繰り返し述べてきた責任は重い。答弁の誤りを放置せず、国会で
自民、立憲民主両党は、憲法改正の手続きを定めた国民投票法改正案について、来年の通常国会で結論を得る方針で一致した。早急に成立させ、衆参両院の憲法審査会で、国の最高法規のあり方を議論することが大切である。