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    参院選挙制度 弥縫策は混乱を広げるだけだ

     小手先の対策では、国民の理解は得られない。参院選挙制度の抜本改革が出来なかったことを、与野党は深刻に受け止める必要がある。

     自民党などが提出した公職選挙法改正案が参院で可決、衆院に送付された。公明党も賛成した。今国会で成立する見込みだ。

     来年夏の参院選から適用するため、周知期間などを考慮し、自民党は結論を急いだのだろう。

     2015年の改正公選法付則は、抜本的な見直しについて「結論を得る」と明記した。選挙の約1年前になって、自らに都合の良い改正案を急きょ提示し、実現を図る自民党の姿勢は疑問だ。

     改正案は、弥縫びほう策に過ぎず、改革の名に値しない。

     特に問題なのは、優先的に当選できる「特定枠」を比例選に導入することである。

     現行の非拘束名簿式は、個人名票が多い順に当選する。特定枠の設定の有無や人数は各党の判断に委ねられる。ほぼ全員の順位を決めることも可能で、その場合、事実上の拘束名簿式となる。

     二つの制度が混在し、有権者には極めて分かりにくい。各党や選挙管理委員会は制度の周知に努め、混乱を避けねばならない。

     自民党は、特定枠を「鳥取・島根」「徳島・高知」の両合区で立候補できなくなる同党の現職議員の救済に活用する考えだ。

     合区対象県で「地方の声が国政に届きにくくなった」と不満が強いのは理解できるが、選挙区選の懸案を、比例選で解決するのは、党利党略との批判を免れない。

     特定枠の導入は、むしろ合区の固定化を招くのではないか。

     改正案は、「1票の格差」を是正する目的から、埼玉選挙区の定数を2増する。16年参院選で最大3・08倍だった格差は、3倍未満に収まる見込みだ。

     参院は、3年ごとに半数ずつ改選されるため、各選挙区に最低2人を割り振らねばならない。定数を維持したまま、格差を是正するのは限界がある。定数増に踏み込んだのはやむを得ない。

     与野党対立のあおりで、抜本改革に向けた道筋はついていない。問題の多い制度を放置すれば、参院の存在意義が問われることを与野党は厳しく自覚すべきだ。

     自民党は合区解消に向けた憲法改正案をまとめている。公明党と日本維新の会はそれぞれ、全国を11ブロックに分割した大選挙区制を導入する案を主張している。

     胸襟を開いて議論を深め、合意形成を図る努力が求められる。

    2018年07月13日 06時03分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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