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    翁長知事死去 沖縄の基地負担軽減を着実に

     沖縄県の翁長雄志知事が死去した。強い指導力を印象付ける政治家だっただけに、政府との対立ばかりが前面に出たことが残念である。

     翁長氏は4月に膵臓すいぞうがんの切除手術を受け、退院後も抗がん剤治療を受けながら公務を担った。

     米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対し、政府と対峙たいじした。菅官房長官は記者会見で、立場の違いを認めつつ「信念の強い方だった」と冥福めいふくを祈った。

     自民党県連幹事長も務めた翁長氏が手腕を発揮したのは、2014年の知事選だ。移設阻止を旗印に、「オール沖縄」と称し、保守の一部と革新勢力をまとめた。前例のない保革共闘で、現職に大差をつけて初当選を果たした。

     知事就任後、15年に前知事が決めた埋め立て承認を取り消し、翌16年に最高裁で敗訴してからも、「あらゆる手段を尽くして工事を止める」と法廷闘争を続けた。

     司法判断とは一線を画し、知事として権限を駆使する姿勢を貫いた。政府との対決をあおるかのような政治手法が混乱を招いた側面はあったにせよ、基地負担に苦しむ沖縄県民の一つの意識を体現したことは記憶に残るだろう。

     辺野古移設への対応については、政府、県ともに今後、見直しを余儀なくされそうだ。

     翁長氏は、政府による辺野古沿岸部への土砂投入を阻止するため、埋め立て承認を無効化する「撤回」を行う方針を示していた。その手続きとなる防衛省沖縄防衛局への聴聞が9日に行われた。

     県は聴聞を受け、近く、撤回に踏み切るかどうか判断するとみられる。職務代理を務める副知事の判断が注目されよう。

     住宅地に囲まれた普天間飛行場は常に、周辺住民を巻き込む事故の危険をはらむ。最近も、米軍ヘリの部品落下などのトラブルが起きた。政府は引き続き、沖縄の基地負担を軽減させる責務を果たさなければならない。

     米軍の抑止力を維持し、普天間の危険性を早期に除去する唯一の道が、辺野古移設である。

     翁長氏の死去に伴い、県知事選は9月に前倒しされる見通しだ。自民党県連は、佐喜真淳・宜野湾市長の擁立を決めた。翁長氏を支援してきた共産、社民両党は候補選考を急ぐ。保守系の安里繁信氏も意欲を示している。

     知事選は、辺野古移設の問題が重要な争点になるだろうが、地域経済や雇用確保など幅広い政策を論じ、沖縄の未来を描く選挙にしてもらいたい。

    2018年08月10日 06時04分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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