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    無戸籍問題 子の幸せを最優先に考えたい

     親の都合で出生届が出されず、子が無戸籍になる。何ら落ち度がない子が不利益を被る現状は、早急に是正すべきだ。

     法務省が、親子関係を定めた民法の規定の見直しに着手する。来年の法制審議会への諮問を視野に、有識者研究会を近く発足させる。子の権利保護を最優先に、議論を深めてもらいたい。

     民法の規定では、婚姻中に妊娠した子は夫の子と見なす。離婚後300日以内に生まれた子についても、別れた夫の子と見なす。

     この「嫡出推定」を否認できるのは、夫に限られる。明治以来、変わらないルールだ。

     無戸籍者は、離婚前後に生まれた子を夫の子として戸籍に載せたくないといった理由で、母親が出生届を出さないために生じる。

     無戸籍になると、かつては住民票の取得さえ難しかった。今でも本人名義での部屋の賃借や口座開設などが困難だ。子にとっては、不条理以外の何ものでもない。

     法務省によると、これまでに計1834人が無戸籍と確認された。法務局や弁護士会が戸籍取得を支援しているが、700人余は依然として無戸籍だ。その多くが民法の規定を理由に挙げる。

     父親を早期に確定させ、子の相続権や扶養を受ける権利を守る。これが民法の規定の目的だが、無戸籍者を生む原因である以上、何らかの見直しは必要だろう。

     嫡出否認の権利を夫にだけ認めている規定は違憲だ、と訴える裁判も提起されている。

     大阪高裁は8月、妻や子が大きな不利益を受けることもあり得る、と指摘しつつ、規定自体は「合憲」と結論付けた。父親を早期に確定し、身分関係を安定させるために、嫡出否認の行使は限定的であるべきだ、との判断からだ。

     民法の趣旨を尊重した上で、判決は「嫡出否認権を妻や子に認めるかどうかは、国会の裁量に委ねられるべきだ」とも指摘した。

     昔に比べて、離婚は珍しくなくなった。別居から離婚まで300日以上を要するケースも少なくない。時代の変化を考えれば、与党からも規定見直しを求める意見が出ているのは当然だろう。

     嫡出否認の権利を妻や子にも認める。嫡出推定の例外規定を設ける。新たな無戸籍者を生み出さないためにも、こうした方策を検討すべきではないか。

     研究会では、夫婦以外の第三者の精子や卵子を用いて生まれた子の親子関係もテーマになる。生殖補助医療についても、大切なのは子の視点に立った議論だ。

    2018年10月08日 06時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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