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    ゴーン前会長 日産への背任の罪が裁かれる

     日産に損害を与える違法行為はあったのか。検察と被告の主張が真っ向から対立したまま、真相解明は法廷に移る。

     東京地検特捜部が、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告を会社法違反(特別背任)などの罪で追起訴した。

     私的な投資で生じた評価損約18億5000万円を日産に付け替えた。投資を巡る信用保証に協力したサウジアラビアの知人側に、日産の子会社から約16億円を提供した。この二つの行為で、日産に損害を与えたという内容だ。

     付け替えについて、ゴーン被告は「日産には一切損害を与えていない」と無実を主張している。特捜部は、付け替えた時点で犯罪が成立するとの立場だ。裁判では、特別背任の構成要件に該当するかどうかが主な争点になろう。

     知人側への送金についても、双方の見解は正反対だ。ゴーン被告は「業務に対する相応の対価だ」と強調する。子会社の元幹部は「多額の資金提供をする理由はなかった」と証言している。

     知人による信用保証があった後に、あいまいな名目で多額の資金を送金させたのは、不自然にも映る。果たして、正当な支出だったのか。特捜部がどこまで立証できるかがポイントになる。

     起訴後のゴーン被告の身柄の扱いにも、注目が集まる。

     ゴーン被告は、自身の報酬を有価証券報告書に過少に記載した、とされる金融商品取引法違反の罪でも起訴された。拘置所での勾留は、昨年11月の最初の逮捕から年をまたいで50日を超えている。

     被告が否認している場合、特捜部が手がける事件では、初公判まで勾留が続くケースが多い。

     長期勾留に対しては「人質司法」との批判があるのも事実だ。ゴーン被告の勾留では、海外メディアなどの厳しい論調が目立つ。

     虚偽記載事件では、特捜部と日産の関係者が司法取引に合意し、多くの証拠を得られたという特別な事情があった。同様の容疑でゴーン被告らが再び逮捕された際、裁判所が勾留の延長を認めなかった理由の一つだろう。

     特別背任罪では、事情がやや異なる。関係者との口裏合わせといった証拠隠滅の恐れを否定できない面があるのではないか。裁判所は、起訴後の勾留の必要性を冷静に見極める必要がある。

     日産にとっては、これからも厳しい局面が続く。虚偽記載事件では、両罰規定により法人として起訴されている。ガバナンス(企業統治)の立て直しが急務だ。

    2019年01月12日 06時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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