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    アートの潜在力 人々の心潤す拠点を増やそう

     アート作品や、それを展示する美術館を地域活性化に役立てる動きが目立っている。人々の心や地域に潤いを与える取り組みを一層広げたい。

     先例になっているのは瀬戸内海の直島や豊島などの島々だ。豊島はかつて、産業廃棄物の不法投棄が問題となった。

     各島内には、独特の形状の建造物や彫刻などが点在する。自然の中に溶け込んだ静謐せいひつな雰囲気が感動を呼び、国内外の多くの人たちをき付けている。

     アート作品は、接する人の心を揺り動かす。奇妙な形態の作品の前では、不思議な感覚にとらわれる人もいるだろう。そうした潜在力をうまく生かせば、人が集い、にぎわいを創出できる。

     金沢市の中心街にある金沢21世紀美術館は、年間200万人超が訪れる人気スポットだ。ガラス張りで気軽に立ち寄れる上、遊び心に満ちた現代アートが来館者の気持ちを楽しくする。

     個性的な空間は、大きな可能性を秘めていると言えよう。

     優れた作品の魅力が来場者にしっかりと伝わるよう、工夫を凝らす施設も増えている。

     注目されるのは、作品を見ながら自由に会話できる対話型鑑賞だ。一つの作品にも、人それぞれの捉え方がある。それを知ることで、想像力や発想力に厚みが増す。教育やビジネスにも生かせる鑑賞方法ではないだろうか。

     日時指定入場制は、作品にゆっくりと向き合うことを可能にする。東京・丸の内の三菱一号館美術館は、子連れでも気兼ねなく鑑賞してもらうため、特別の開館日を設ける試みを実施した。

     スマートフォンでの撮影や、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)での拡散を認める美術館もある。展示作品を広く認知してもらう狙いがある。多様な鑑賞スタイルは、美術館を身近な存在にするのに役立つ。

     もちろん、賑わいの創出には、美術館などが優れた作品を集める能力を有することが前提となる。作品の価値を見極められる学芸員の確保は重要だ。

     企画力のある企業と連携し、独創的なイベントを開くのも効果的だ。瀬戸内海の島々で定期的に開かれる芸術祭は、アートの拠点としての知名度を高める上で、大きな役割を果たしている。

     人気スポットになれば、そこに自分の作品を展示したいと願う芸術家も出てくるだろう。重要なのは、アートを活用するためのネットワークの構築である。

    2019年01月13日 06時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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