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◆人口減踏まえた対応策を探れ◆
東日本大震災の発生から8年になる。
死者・行方不明者は1万8430人に上り、関連死も3700人を超える。未曽有の災害は平成史に深く刻まれた。犠牲になった方々の
震災発生後、政府は復興に要する期間を10年間と見積もった。後半5年の「復興・創生期間」も残り2年となっている。
残された課題の解決に一段と力を注がねばならない。
◆住民の孤立を防ごう
甚大な津波被害を受けた岩手、宮城、福島3県では、被災者の生活の基盤となる住宅の再建事業がゴールに近づいている。
復興住宅は計画の98%にあたる約3万戸が完成し、宅地造成の
震災1年後に11万人以上に及んでいた仮設住宅団地の避難者は、3000人台に減少している。政府は岩手、宮城県について、2年程度での仮設解消を見込む。
懸念されるのは、移転先で孤立する住民が目立つことだ。
マンション型の復興住宅には、高齢世帯が多く、孤立死が報告される。地元自治体が、NPOなどの協力を得て展開してきた見守り活動も、時間の経過とともに縮小される傾向にある。
移転してきた被災者と地元住民との交流を促す取り組みが欠かせない。多くの住民が集うイベントの開催や自治会運営への支援を通じ、コミュニティーの形成を後押ししていくことが望まれよう。
津波の被災地では、大規模なかさ上げで造成された宅地の利用にめどが立たないことも、依然として大きな課題である。
岩手県陸前高田市では、宅地用のかさ上げ地の約66%で、当面は利用予定がないという。
いかに街の魅力を高めるか。さらに知恵を絞らねばならない。
岩手県の宮古―釜石間の鉄路が今月下旬、三陸鉄道リアス線として復旧する。釜石市はラグビー・ワールドカップの会場となる。
一過性の話題に終わらせず、こうした機会を地域の活性化に役立てていくことが大切である。
東京電力福島第一原発の周辺地域では昨年から、公共施設や住宅を集約し、住民の帰還に備える取り組みが始まった。
◆実効性ある整備計画に
放射線量が高い帰還困難区域の一部を「特定復興再生拠点」として、優先的に除染する。
帰還困難区域全体を除染するには膨大な時間と費用がかかる。各町村内で地域を絞り、再生を図るのは現実的な措置と言える。政府は着実に除染を進めるべきだ。
ただし、復興再生拠点の避難指示解除は3~4年後になる。
ほぼ全域が帰還困難区域の双葉町では、昨秋の調査に避難住民の6割超が「戻らないと決めている」と回答した。医療や福祉に不安があるといった理由が多い。
不安を解消するには、実効性のある地域再生の青写真を避難住民に示す必要がある。
医療機関や商業施設などをどう整備するか。具体策に踏み込んだ計画の策定が不可欠だろう。
避難指示が解除された地域でさえ、住民が戻る動きは依然として鈍い。帰還率が比較的高いとされる楢葉町でも、現在の居住者は震災前人口の半数弱だ。
こうした現状を踏まえれば、除染後の帰還困難区域についても楽観はできまい。
第一原発周辺では大量の除染土が発生し、農地などに積み上げられている。帰還促進のため、その処分は喫緊の課題である。
飯舘村では、放射線量の低い除染土を使って農地を造成し、花などを栽培する試みがスタートした。除染土で低地をかさ上げし、通常の土で覆う。丁寧な説明で住民の理解を得ながら、再利用を広げていくことが大切だ。
◆息の長い支援が必要だ
自治体がばらばらに復興を進めるのではなく、分散する医療機関や介護施設などを集約する。連携して商業施設を誘致する。多くの住民が戻らないことも視野に入れた方策を、検討すべき時期に来ているのではないか。
2年後に設置期限を迎える復興庁については、後継組織の設置が閣議決定された。安倍首相は、「復興が成し遂げられるまで国が前面に立つ」と強調している。
被災地には息の長い政府の支援が要る。中でも、原発事故の傷痕が深い福島の復興に向けた取り組みは、完了時期が見通せない。
後継組織の体制は今後、政府・与党内で検討が進められる。復興という重い責務を担える組織を作らねばならない。