和牛の遺伝資源 国外流出防ぐ体制整備を急げ

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 日本にとって貴重な和牛ブランドが、海外から狙われている。それを如実に示す事件である。

 和牛の受精卵と精液を中国に持ち出そうとしたとして、大阪府警が、運搬役と指示役とみられる男2人を家畜伝染病予防法違反と関税法違反の疑いで逮捕した。

 指示役の男は「中国人に頼まれた」と供述した。受精卵などを売却した徳島県の畜産農家は「面識のない人物に数百万円で売った」と説明している。府警には全容を解明してもらいたい。

 家畜の輸出入には、相手国との取り決めが必要だ。和牛の受精卵や精液には取り決めがなく、輸出は事実上、禁じられている。

 一方で、家畜の遺伝資源を保護する国内法は存在しない。府警が今回、伝染病を防ぐための家畜伝染病予防法を適用した事実が、法の不備を象徴していると言えよう。検疫を受けていなかったことなどを逮捕容疑とした。

 肉質がきめ細かく軟らかい和牛のブランド価値は、海外でも高い。牛肉の輸出額は2018年までの5年間で約4倍に伸びた。畜産農家などが改良を重ねた成果だ。

 遺伝資源が国外に流出して、現地の牛と交配されれば、肉質が和牛と似た牛が広範に生まれかねない。日本からの輸出量が減少し、畜産農家が深刻なダメージを受ける事態は避けねばならない。

 農林水産省は、家畜の遺伝資源を守る法整備などを検討する有識者検討会を発足させた。06~07年にも同様の議論をしたが、品質の均一性を保つのが難しく、知的財産として保護しにくいという理由から、見送った経緯がある。

 法整備には、この難題の克服が、カギとなるだろう。

 和牛の受精卵や精液の採取、販売は、都道府県が許可した施設しか認められていない。販売の際には、採取日などを記した証明書の交付が義務付けられているものの、販売先に制限はない。

 今回の流出元の畜産農家も許可を受けていたが、証明書は交付していなかったという。

 販売先の厳密な確認など、行政が監視を強める。空港や港での手荷物検査を徹底する。法整備を待たずとも、対策を強化したい。

 危機にひんしているのは、和牛に限らない。栃木県が開発したイチゴ「とちおとめ」の種苗が韓国に流れて他品種と交配され、新品種として出回った。損失額は5年間で220億円と試算される。

 政府を挙げて、遺伝資源を守る体制整備を急ぐべきだ。

485962 0 社説 2019/03/13 05:00:00 2019/03/13 05:00:00

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