美術工芸品 修理と活用の好循環を作ろう

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 公開などで得た収益を保存・修理体制の強化に活用し、貴重な文化財を維持する。その好循環を作り出したい。

 改正文化財保護法が、4月から施行される。保存と活用からなる文化財保護行政のうち、活用を一層重視する。自治体は、保存活用に関する総合計画を主体的に策定できるようになる。

 絵画や仏像、刀剣などの美術工芸品は、国宝を含む国指定重要文化財だけで1万件を超える。これらを生かし、自治体が観光戦略を充実させることが期待される。

 日本の美術工芸品は、木や和紙などを素材とするものも多い。50年に1度は本格修理をしなければ、劣化が進む。丁寧に取り扱ってこそ、価値が保たれる。

 所有者や自治体は、劣化が進まないよう、保存・修理にも万全を期さねばならない。

 問題は、費用負担が大きいことである。美術工芸品の保存・修理は原則、寺などの所有者が行う。国の補助金を受給できても、それだけでは費用を十分に賄えず、修理に踏み出せない例が多い。

 展覧会の開催などで収益を確保し、保存・修理の費用に充てる仕組み作りを進めたい。文化財の修理を助成するファンドや民間企業に、積極的に支援を求めることも検討に値しよう。

 美術工芸品の修理に関しては、技術者の高齢化に加え、修理に用いる原材料や用具の生産が減っているという課題もある。

 かっちゅう修理や表具用の和紙製作といった技術の保持者は、極めて少ない。技術の習得には10年を要すると言われるが、各工房は若者を雇用する余裕に乏しい。漆や和紙原料となるコウゾなどの生産が続かなければ、修復はできない。

 文化財について学んだ学生の就職先を確保する。海外にある日本の美術品にも目を向け、修理件数を増やす。技術の継承には、こうした努力が欠かせない。

 修理を進める以前に、文化財がきちんと保存されていないという問題点も指摘される。

 地方では近年、無住の寺院が増加し、仏像などの管理が行き届かないケースが目立つ。国の重要文化財ですら、所在不明の美術工芸品は100件以上あり、盗難で失われたものも少なくない。

 自治体は、まず域内の美術工芸品をきめ細かく把握した上で、保存対策を立てる必要があろう。

 保存・修理には国民の理解が重要だ。博物館で修理現場を見せるツアーを実施するなど、関心を高める試みの拡充を求めたい。

493374 0 社説 2019/03/17 05:00:00 2019/03/17 05:00:00

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