患者死亡再審へ 自白に頼る捜査への戒めだ

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 「疑わしきは被告人の利益に」との原則に沿った判断だろう。

 滋賀県東近江市の湖東記念病院の元看護助手、西山美香さんの再審開始が決まった。入院患者の人工呼吸器を故意に外して殺害したとして、殺人罪で懲役12年が確定し、服役した。

 最高裁が、自然死の可能性がある、との理由で再審の開始を認めた大阪高裁の判断を支持した。今後の再審公判で、無罪が言い渡される公算が大きい。

 再審開始の主たる条件は、示された証拠に新規性、明白性があることだ。今回は、患者の死因と捜査段階の自白の信用性を巡る証拠の評価が争点だった。

 大阪高裁は、死因に関し、弁護側提出の医師の鑑定書などを新証拠と評価した。解剖時の血液データに基づき、不整脈による自然死の可能性があると結論付けた。

 裁判官が、殺人事件ではないのでは、との心証を抱いた以上、再審開始は当然である。

 西山さんは、捜査段階で自白した。公判では一転、無罪を主張したが、確定判決は「詳細かつ具体的」と自白の信用性を認めた。

 対して、大阪高裁は、自白には多数の点で目まぐるしい変遷がある、と信用性を疑問視した。取調官の誘導に迎合した虚偽供述の可能性にまで踏み込んでいる。

 自白頼みの捜査を戒める意味合いがあるのではないか。

 自白の強要や脅迫がなくても、虚偽の自白に至る恐れはある。西山さんは、取り調べ担当の警察官に好意を抱いていたという。

 捜査機関は、迎合的な傾向がある容疑者には、より慎重に対応する必要がある。裁判所は、自白の信用性の見極めに細心の注意を払わなければならない。

 鑑定の手法の多様化で、再審開始が認められる事例が相次ぐ。

 鹿児島県の「大崎事件」で、鹿児島地裁は、供述を心理学的に分析した「供述心理鑑定」に高い証拠価値を認めた。福岡高裁宮崎支部は、これを不合理だとして認めず、別に法医学鑑定書を新証拠として、再審開始を支持した。

 今回の新証拠は、別人による犯行を物語るDNA鑑定結果といった決定的証拠ではなかったが、再審の扉は開かれた。

 証拠の新規性、明白性をどう評価するか、明確な基準は存在しない。大阪高裁は、再審を認める新証拠の範囲を幅広く捉えたと言える。それを最高裁が支持したことは、今後の再審の判断に少なからず影響を及ぼすだろう。

501456 0 社説 2019/03/22 05:00:00 2019/03/22 05:00:00

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