松橋再審無罪 検察は証拠開示を徹底せよ

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 検察の証拠開示の重要性を、浮き彫りにした裁判だったと言えよう。

 熊本県で1985年に男性が刺殺された「松橋まつばせ事件」の再審判決で、熊本地裁が無罪を言い渡した。検察は控訴を断念した。殺人罪などで懲役13年の刑を受けて服役した宮田浩喜さんの無罪が確定した。

 この事件は物的証拠に乏しく、検察の立証は自白頼みだった。今回、有罪の確定判決を覆す決め手になった新証拠は、弁護団が再審請求に向けて、検察で証拠を閲覧した際に見つけた布片だ。

 自白では「シャツの左袖を切り取り、小刀の柄に布片を巻き付けて犯行後に燃やした」とされた。燃やされたはずの布片が出てきたのだから、「自白の重要部分に客観的事実との矛盾がある」と再審で認定されたのは当然である。

 当時の捜査で、自白の裏付けがずさんだったと言うほかない。そもそも当初の公判で検察が布片を証拠提出していれば、有罪にはならなかった可能性がある。

 税金と公権力を使って収集された証拠を検察が独占し、弁護側を排除すべきではない。検察は自らに不利な証拠であっても明らかにし、真相の究明と公正な審理の実現に努めることが求められる。

 今回の再審で得られた教訓を、検察は胸に刻んでもらいたい。

 近年、当初の裁判で検察が開示しなかった証拠が、再審請求の過程で明らかになり、再審無罪につながる事例も相次いでいる。

 2人が再審無罪となった「布川事件」では、真犯人は別人であることを示唆する目撃証言が再審の扉を開けるきっかけになった。

 2016年に改正された刑事訴訟法は、検察が全証拠のリストを弁護側に開示することを義務付けた。一方、再審ではこの仕組みは取り入れられず、検察や裁判所の裁量に委ねられている。

 再審における証拠開示の在り方は重要な検討課題である。

 松橋事件の再審公判は1回だけで結審し、わずか30分で終わった。今回の再審に対しては、取調官の証人尋問などを通じて捜査の問題点をあぶり出すことを期待する声もあったが、地裁は早期の公判終結を優先した。

 事件から34年が経過し、85歳の宮田さんは認知症などで寝たきり状態にある。地裁は宮田さんの体調を考慮したのだろう。

 とはいえ、誤判の検証を怠ってはなるまい。この事件では立証を支える証拠が脆弱ぜいじゃくだったにもかかわらず、自白を偏重して有罪となった。裁判所も反省すべきだ。

514145 0 社説 2019/03/30 05:00:00 2019/03/30 05:00:00

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