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大阪ダブル選を制しただけで、大阪都構想が前進すると考えるのは早計だ。反対勢力の意見も
大阪の府知事と市長が入れ替わって選挙に臨んだ。地域政党・大阪維新の会が奇策を仕掛けて、自民、公明、立憲民主党などが支援した対立候補を退けた。
維新は2011年以来、府と市のトップを担い、緊密な連携の下で、万博誘致を実現し、府立大と市立大の法人統合などの改革を進めた。有権者はこうした実績を評価し、維新に引き続き府・市政を委ねたのだろう。
15年の住民投票で否決された都構想の再挑戦を目指す。維新代表の松井一郎氏は「真正面から丁寧な議論をしたい」と語った。
実現へのハードルはなお高い。具体的な制度設計を行う法定協議会や府・市両議会において、過半数の賛成で可決したうえで、住民投票で支持を得る必要がある。
ダブル選と同日行われた府議選で、維新は過半数を得たものの、市議選では届かなかった。多数を形成するには、公明党などの協力が不可欠である。
敵対する勢力を作って攻撃し、耳目を集めて正面突破する。劇場型の手法を維新は駆使してきた。公明党から譲歩を引き出すため、次期衆院選で、公明党現職のいる選挙区に対抗馬を擁立する案が早くも浮上している。
都構想は、政令市の大阪市を廃し、現行の24区を特別区に再編する。二重行政の無駄を省いて財源を捻出し、様々な施策を一元的に推進するのが狙いだ。
一方で、新たな特別区の設置には、庁舎整備やシステムの改修など数百億円のコストがかかるとの試算がある。行政サービスの低下を懸念する声も少なくない。
府と市の連携が進む中で、新たな制度をなぜ整備するのか。その内容や利点などを分かりやすく示すことが重要である。
関西や大阪を活性化させていくには、万博開催などを生かし、外国人観光客の拡大などを進めなければならない。防災や医療、福祉サービスの充実も欠かせない。
都構想ばかりに傾注せず、維新は、大阪の将来について明確な全体像を描き、戦略的に政策を遂行することが求められる。