WTO逆転敗訴 安全性を科学的に訴え続けよ

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 予想外の判断である。日本は、科学的根拠に基づき、水産物の安全性を訴え続けるしかない。

 世界貿易機関(WTO)の上級委員会は、韓国による日本産水産物に対する輸入禁止措置について、事実上容認する報告書をまとめた。

 是正を求めたWTO紛争処理小委員会(パネル)の判断を破棄し、日本の逆転敗訴となった。上級委は最終審にあたる。韓国の禁輸措置は当面続く見通しだ。

 韓国は、東京電力福島第一原子力発電所事故後の2013年9月から福島、岩手、宮城など8県産の水産物の輸入を全面禁止している。これに対して、日本は「科学的根拠がなく、自由貿易を阻害する」とWTOに提訴していた。

 WTOのルールでは、食品の輸入に関して「恣意しい的または不当な差別」を禁じている。

 1審のパネルは、この規定に反すると認めたが、上級委は一転してこれを覆した。上級委の審理に際し、日本の立証努力は十分だったのか、検証が求められる。

 日本は農林水産物・食品の輸出拡大を目指し、19年に1兆円に増やす目標を掲げている。しかし、震災から8年たった今も、中国や台湾を含む23の国・地域で日本産食品の輸入規制が続く。

 上級委で勝訴すれば、各国に規制緩和を求める説得材料にできた。日本政府は「規制措置全体の撤廃を求めるという立場に変わりはない」と説明するが、戦略の練り直しを迫られよう。

 食品への放射性物質の影響について、日本は国際水準より厳しい基準を設けて検査し、輸出している。風評被害が再燃し、被災地の復興に支障が出ないよう、政府には万全の対策が望まれる。

 上級委は、1審の結論に誤りがあるとしたが、韓国の禁輸がWTOルールに反しているかどうかについては判断を示さなかった。

 菅官房長官は「日本産食品は科学的に安全で、韓国の安全基準を十分クリアするとの1審の事実認定は維持された」と強調した。政府は、報告書を詳細に分析し、日本の食の安全性を論理的に世界に発信していかねばならない。

 現在、WTOの紛争処理機能は低下している。上級委の判事にあたる上級委員の定員は7人だが、うち4人が欠員だ。WTOに批判的な米国が委員の指名を拒否し続けているためで、このままでは機能不全に陥る恐れがある。

 上級委の立て直しを含めたWTO改革についても、日本は各国と連携しながら取り組むべきだ。

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537047 0 社説 2019/04/14 05:00:00 2019/04/14 05:00:00

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