天皇陛下退位 国民と歩み象徴像を体現した

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 ◆健やかに過ごされることを願う◆

 30年余にわたって真摯しんしに公務を果たし、象徴像を体現してこられたことに深く感謝したい。

 天皇陛下がきょう退位される。退位による代替わりは、江戸後期の光格天皇以来、約200年ぶりだ。憲政史上初めてのことである。

 陛下は1989年の即位後、「皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たす」と述べ、憲法が定める象徴の在り方を日々模索してこられた。

 ◆一人ひとりと目合わせ

 2016年にビデオメッセージで退位を示唆した際、陛下は天皇の務めとして「国民の安寧と幸せを祈る」「時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添う」ことを挙げられた。

 陛下はその言葉通り、能動的に務めを果たされた。象徴について積極的に発言されなかった昭和天皇とは異なり、独自のスタイルを築かれた。この在り方は、国民に広く敬愛されたと言えよう。

 地方訪問を重ねることで、象徴像の具体化に努められた。国民体育大会などに出席するため、全都道府県を2巡された。

 平成は災害が相次いだ時代だった。陛下は地震や噴火などの被災現場を訪れ、膝をついて被災者と言葉を交わされた。障害者やハンセン病元患者との面会も熱心に繰り返された。

 一人ひとりと目を合わせ、双方向の触れ合いを大切にされる。旅に出ない時でも、東日本大震災後のビデオメッセージのように、国民に直接語りかけられる。

 その姿勢が皇室を身近な存在にしたことは間違いあるまい。国民を力づけ、社会が安定する結果をもたらしたと考えられる。

 陛下は、平和を希求する気持ちが強く、先の大戦の戦没者を慰霊することに力を注がれた。足を運ばれたのは、広島や長崎などの国内に加え、多くの日本軍将兵が倒れたサイパンやパラオなどの南洋の島々に及んだ。

 とりわけ思いを寄せられたのが、大きな犠牲を生んだ沖縄だ。両陛下の訪問は、皇太子時代を含めて通算11回に及び、沖縄の苦難に何度も言及された。

 戦争の犠牲の上に、戦後の平和と繁栄がある。11歳で終戦を迎えられた陛下は、常にその思いを持たれていたのだろう。

 国際親善の場では、数多くの外国訪問や各国賓客との面会を通じ、友好関係の前進に尽くされた。その中には、かつての敵国や植民地だった国も含まれていた。

 陛下が築かれた友好関係は、次代に発展させていくべき資産として、受け継がねばならない。

 ◆皇后さまの支え大きく

 陛下が務めを果たされる上で、大きな支えとなったのが、皇后さまの存在である。民間出身の皇后さまは、どのような立場の人にも優しさを示された。陛下の公務の多くに同行なさった。

 両陛下が仲むつまじく二人三脚で歩まれる姿は、ともすれば近寄りがたかった皇室のイメージを刷新したのではないか。

 天皇家の在り方についても、両陛下は新風をもたらした。皇太子夫妻時代にはお子さま方を手元で育てられた。陛下は前立腺がん、心臓の手術を受けたが、基本的な情報は国民に公開された。

 埋葬法を土葬から火葬へ変更することや、陵(お墓)の規模の縮小を発表されてもいる。伝統を守りつつ、天皇家も柔軟に変化することを示した点で、歴史的な役割を果たされた。

 今回の退位は、陛下が体力的な衰えを理由に、象徴の務めを果たせなくなるとの気持ちを示されたことがきっかけだった。多くの国民は驚きつつも共感を覚えた。

 政府や国会は、特例として退位を認める退位特例法を成立させた。天皇の政治的権能を禁じた憲法に抵触しないよう、政治的対立の回避に腐心しながら、慎重かつ丁寧に対応した結果と言える。

 ◆安定的な継承が課題

 陛下は「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていく」ことを祈念された。いかに皇位を継承していくかは、今後も考えていくべき課題である。

 陛下は退位後、上皇としてゆっくりとした生活に入られる。生物学者でもある陛下は十分な研究時間を持たれ、上皇后となる皇后さまはこれまで以上に文学に親しまれることだろう。

 務め終へ歩み速めて帰るみち

 月の光は白く照らせり

 2007年に詠まれた陛下のお歌だ。これからは、務めに追われることもなくなろう。両陛下がいつまでも健やかに過ごされることをお祈りしたい。

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561548 0 社説 2019/04/30 05:00:00 2019/04/30 05:00:00

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