憲法記念日 令和の国家像を描く議論を

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 ◆与野党協調の原点に立ち返れ◆

 国家の針路を定める憲法を自らの手で変えて、新たな時代の国家像を描く。その歩みを進めることができるか。政治の力量が問われている。

 きょうは、令和で最初の憲法記念日である。現行憲法は国民主権、平和主義、基本的人権の尊重を定着させ、戦後日本が平和国家として発展する礎となった。

 他方、この72年間、一度も改正されない憲法と、現実の社会との乖離かいりが生じている。最高法規を固守するのか、新しい時代にふさわしい手直しを目指すのか。日本は大きな決断を迫られよう。

 ◆湾岸戦争の対応が転機

 長くタブー視されてきた憲法論議は、平成の時代に前進した。

 転機は、1991年の湾岸戦争だ。政府は、国際貢献のため自衛隊の派遣を進めようとしたが、武力行使を禁ずる憲法9条が壁となった。憲法改正の必要性が認識されるようになった。

 保守、革新勢力が対立した55年体制が崩壊したことも、自由に憲法を論じる機運を醸成したと言える。読売新聞が94年に発表した改正試案を先駆けに、民間団体から提言が相次いだ。

 こうした流れをくみ、2000年に衆参両院で憲法調査会が発足した。全党が議論に参加し、5年後に報告書をまとめあげた。

 9条にとどまらず、衆参の役割分担、環境権など新しい権利の追加など、逐条的に論点と改正の方向性をまとめている。改正案を具体化していくうえで、一定の基盤を整えた意味を持つ。

 その後も、内外の情勢は大きく動いている。中国は軍備を増強し、北朝鮮の核とミサイルの脅威は高まった。デジタル化が進み、社会のあり方も変容している。

 憲法は、国民の権利と義務、統治の仕組みなど国の根幹を形作っており、主権者である国民のものである。「不磨の大典」とせず、適切に機能するよう、不断に見直すことが立法府の責務である。

 12年の政権復帰以来、安倍首相は、憲法改正を政治課題に位置付けている。政権批判を強める野党は、論議のテーブルに着くことを敬遠している。

 国会対策上の駆け引きを優先し、これまでの積み重ねを反故ほごにするのは甚だ疑問である。

 ◆9条改正が中心課題に

 調査会と、その後継の審査会は、政局とは一線を画し、与野党が信頼を醸成しながら、議論を深めるのを伝統としてきた。

 この原点に立ち返り、真摯しんしに討議する態勢を早期に整えたい。

 憲法改正には国会での発議後、国民投票で過半数を得るという高いハードルが待ち受ける。合意形成を進め、世論の理解を広げることが重要だ。与党は度量を、野党は良識を示さねばならない。

 もとより、憲法改正論議の中心は、9条である。一部に根強く残る自衛隊違憲論を払拭ふっしょくし、国の安全と国民の命を守る正当性を明確にする狙いは理解できる。

 自民党がまとめた改正案は、戦力不保持を定めた2項を維持したまま、自衛隊の根拠規定を追加する。現行の条文に手を加えず、政府解釈との整合性を取った。

 各党のみならず、国民に粘り強く理解を求めていくべきだ。

 自民党は、緊急事態条項の創設も打ち出している。大震災などで国政選が実施できない場合、衆参両院議員の任期を特例として延長できるようにする。

 民主主義を機能させるうえで、妥当な措置と言えよう。

 忘れてはならないのは、内閣や国会など統治機構の改革だ。

 衆参ねじれ国会では、野党が参院で法案や同意人事案を否決し、国政は混乱に陥った。

 衆院とほぼ同等の権能を持つ「強すぎる参院」の是正が欠かせない。衆院の再可決の要件について、3分の2以上から過半数に引き下げることも検討に値する。

 ◆統治機構改革が急務だ

 衆参の役割分担を明確にするとともに、それに応じた選挙制度の見直しが避けられまい。

 急速な人口減少など、地方を取り巻く状況が険しさを増す中、自治体の機能や権限などについても、積極的に論じるべきだ。

 ドイツは、戦後60回以上の憲法改正を重ねたが、その多くは連邦と州の役割の見直しなど、統治機構にかかわるものだ。海外の事例も参考となるのではないか。

 時代の変化をどう読み取り、対処していくのか。その具体像を指し示すのが憲法である。

 夏の参院選に向けて、各党は、精力的に党内論議を行い、憲法改正の主要論点について、見解をまとめねばならない。

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565456 0 社説 2019/05/03 05:00:00 2019/05/06 12:50:25

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