人工知能と人間 適切に使いこなす力を磨こう

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 ◆倫理面のルール作りが課題だ◆

 平成時代を通じ、社会のデジタル化が進んだ。人工知能(AI)も急速に普及した。先端的な技術にどう向き合うかが問われている。

 コンピューターが、大量の情報を処理し、分析や判断を行う。それがAIだ。その速度と処理力は、時に人間をしのぐ。

 2012年に、画期的な画像認識手法が開発された。猫が写った画像を入力すると、犬や豚ではなく「猫」と見分けられる。

 この手法を応用することにより、人間のような自然な会話をしたり、複雑で高度な判断をしたりできるようになった。

 16年には囲碁AIの「アルファ碁」が人間のトップ棋士を破り、世界を驚かせた。現在は自動翻訳や車の自動運転、ロボット開発などに利用されている。

 今後も様々な分野に、AIが進出していくのだろう。

 ◆労働力不足を補うか

 AIの特徴は、利用者に的確な情報を提供し、サービスの質を高められることだ。過去のデータを基に、商品の需要を正確に予測して、ビジネスの効率も上げられる。

 例えば医療用AIは多くの内視鏡データを学習し、画像分析から熟練の医師並みに手術の要否を判断する。農業では、天候データから種まきや収穫の最適な時期を予測する。

 少子高齢化が進む日本は、深刻な労働力の減少に直面している。AIの活用により、労働力不足を補い、生産性の向上につなげることが期待される。

 危険なのは、AIの判断をうのみにしてしまうことだ。

 米国の一部地域では、AIが分析した情報を参考に、警察が黒人が多く居住する地域を重点的にパトロールしていたことが、差別だとの批判を招いた。

 保険に加入する際の審査にも、活用が検討されている。病歴や遺伝情報から、AIがリスクを過大評価すると、本来よりも高い保険料を請求されかねないといった懸念を指摘する声もある。

 ◆長所と短所の見極めを

 AIの判断を絶対視することは出来ない。長所と短所を見極めた上で、どこまで任せるかを人間が決める必要がある。

 AI活用にあたって、倫理面のルールを整備し、社会的な合意を作っていくことが求められる。

 政府は3月、AIの倫理に関する統一見解をまとめた。判断の結果に人間が責任を持つことや、プライバシーの重視などが柱だ。

 統一見解に拘束力はないものの、AIとの向き合い方を社会全体で考える契機としたい。

 AIの倫理を巡る議論は、海外でも活発化している。個人情報保護を重んじる欧州連合(EU)でも、4月に倫理指針案をまとめた。人種・性別による差別の回避や、事故が起きた際に説明責任を課すことなどを規定した。

 日本との共通点も多い。AIの開発は国際的な共同研究で行われることも少なくない。利用するデータも国境を越えてやり取りされる。国際標準となるルール作りを目指すべきだろう。

 日本は6月に大阪で開かれる主要20か国・地域(G20)首脳会議などで議論をリードしたい。

 現在のAI開発は、米国の巨大IT企業が主導し、中国が追随する構図だ。両国は激しい覇権争いを繰り広げている。

 これに比べて、日本の取り組みの立ち遅れが目立つ。

 ◆人材のすそ野広げたい

 特に深刻なのは、人材の不足である。経済産業省の推計では、AI研究開発などを担う人材は30年に12万人足りなくなるという。

 トップレベルの人材は国際的に獲得競争が激化している。企業や研究機関は、十分な報酬や充実した設備を整え、優れた人材を獲得する努力を怠ってはならない。

 AIを使いこなす人材のすそ野を広げることも大切である。

 政府は、大学や高等専門学校では文系、理系を問わず、ほぼ全ての学生にAIの初級の知識を教えることを目指す。このうち、25万人は自らの専門分野で応用できるレベルへ育てる構想だ。

 実現可能性には疑問もあるが、出来るだけ多くの人にAIの基礎的な知識の習得を促そうという考え方は理解できる。

 AIの普及に伴い、今後は事務作業などの定型的な仕事は機械に代替される可能性が増す。一方で、創造的な発想やきめ細かなコミュニケーションなど、まだAIにはこなせないことも多い。

 人間にしかできない能力を磨きながら、AIを適切に活用する新たな社会を作っていきたい。

無断転載禁止
568730 0 社説 2019/05/06 05:00:00 2019/05/06 12:50:27

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