米国の対中制裁 冷静な対話で混乱を回避せよ

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 米国と中国の対立激化は、世界経済の先行き不安を著しく増幅する。貿易を巡る対立は、あくまで冷静な対話を重ねることで解決すべきだ。

 トランプ米大統領が、2000億ドル(約22兆円)相当の中国製品に課している制裁関税を10日から引き上げると表明した。10%を25%に改めるという。

 9日から始める閣僚級の貿易協議で、中国から一層の譲歩を引き出す狙いがあるのだろう。

 市場では最近、米中協議が近く合意に達するとの楽観論が強まっていた。突然の引き上げ表明は、こうした見方を覆した。投資家の心理は一気に悪化し、世界同時株安を引き起こしている。

 7日の米国市場では、平均株価が一時650ドル近く下がった。8日の東京株式市場も、321円安と大幅な続落となった。

 米中は世界の国内総生産(GDP)の約4割を占める。関税引き上げで対立が先鋭化すれば、市場や経済活動に一段と深刻な打撃が及ぶ。貿易紛争が泥沼化するような事態を招いてはならない。

 閣僚級協議では、米中双方が歩み寄り、制裁関税の引き上げを回避する必要がある。

 トランプ氏の唐突な表明の背景には、米国が堅調な成長を保ち、株価も最高値に迫っていたことがうかがえる。中国に強硬姿勢で臨んでも、米国が受ける悪影響は小さいと判断したとみられる。

 だが、関税引き上げの対象品目には、家電や家具など生活関連品が多く含まれる。輸入品の値上がりで、米国の成長を牽引けんいんする消費が冷え込みかねない。米国は関税を引き上げるリスクを、より慎重に見定めることが求められる。

 そもそも制裁関税を振りかざせば、中国の態度は硬化し、合意はむしろ遠のくのではないか。貿易問題は脅しではなく、相互の信頼に基づいた話し合いによって打開しなくてはならない。

 無論、交渉の進展には、中国側の対応も不可欠だ。中国が不公正な貿易慣行や規制を続けていることには、米国だけでなく、日本や欧州もいら立ちを強めている。

 特に米国が不満を募らせているのは、中国が国有企業へ巨額の補助金を支給し、自由な競争環境をゆがめている問題だ。自国産業への過度な優遇政策を見直さなければ、対立の解消は難しい。

 中国経済は政府の景気対策でようやく持ち直し始めたところだ。成長の鈍化に歯止めをかけるためにも、前向きな改革案を自ら示していくことが重要になろう。

573451 0 社説 2019/05/09 05:00:00 2019/05/09 05:00:00

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