米国の対中関税 憂慮される制裁と報復の拡大

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 米中両国の対立がさらに激しさを増し、長期化する事態をいかに回避するか。制裁と報復の拡大を防ぐには、双方がより真剣に譲歩を模索していかねばならない。

 米国政府が、中国からの輸入品のほぼ全てに制裁関税を課す計画を発表した。これまで制裁対象から外れていた約3000億ドル(約33兆円)分の製品に対し、最大25%の関税を上乗せするという。

 中国も、米国が先週決めた関税引き上げに対抗する報復措置を、6月から始めると表明した。

 米中が高関税をかけ合えば、双方の経済活動に深刻な打撃を与える。金融市場の動揺や企業心理の悪化を招き、世界の景気が大幅に下振れするリスクも高まる。

 トランプ大統領は、6月末の主要20か国・地域(G20)首脳会議の際、習近平国家主席と会談する意向だ。両政府は実務的な協議を精力的に重ね、首脳が歩み寄れる環境を整える必要がある。

 憂慮されるのは、対立がいたずらに長引きかねないことだ。

 トランプ氏が最近、対中姿勢を厳しくしている背景には、強硬な態度が、政権の支持率上昇につながっているという事情がある。

 来年秋の大統領選がもっと近づくまで、対立を続けても構わないとの思惑が働かないか心配だ。

 制裁対象品目には、スマートフォンや衣料品など、生活関連品が多く含まれる。関税上乗せの影響で商品価格が上がれば、米国の消費者は大きな痛手を被る。

 今は対中強硬路線が支持されていても、物価の上昇で有権者から強い反発が起きる恐れがある。

 追加制裁の撤回は、トランプ政権にとっても得策ではないか。公聴会などで企業や消費者の声に耳を傾けることが大切になる。

 中国経済は、制裁拡大で再び成長が鈍化しかねない。国有企業への補助金支給問題などで、米国と折り合う工夫を凝らすため、さらに知恵を絞るべきだろう。

 米中摩擦の先鋭化は、日本にとっても見過ごせない不安要因だ。両国の経済が減速すると、日本の景気が冷え込む懸念がある。

 中国に生産拠点を置き、米国に輸出する日本企業は、特に苦境に陥る。対中投資やサプライチェーン(供給網)の在り方など、戦略の抜本的な再考を迫られよう。

 今月下旬の日米首脳会談や、日本が議長国を務めるG20では、米中が全面対決に至らぬよう、双方に自制を求めなくてはなるまい。両国を結ぶ懸け橋として、日本は重責を果たすことが不可欠だ。

583495 0 社説 2019/05/15 05:00:00 2019/05/15 10:29:16

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