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国民が刑事裁判の審理に加わる裁判員制度が、施行から10年を迎える。制度への理解を深め、参加する意義を訴えていくことが欠かせない。
裁判への参加を通じ、司法に対する国民の信頼を高める目的で導入された制度だ。これまでに9万人超が裁判員や補充裁判員を務め、1万2000人近くの被告に判決が言い渡された。
判断に市民感覚が生かされている事例が多く見られる。
裁判官裁判の時代に比べ、性犯罪事件で重い刑を選択する傾向が目立つ。卑劣な犯罪に対する厳しい姿勢が反映された結果だ。執行猶予の半数以上に保護観察が付いているのは、被告の更生を裁判員が重視した表れだろう。
法廷の光景は変わった。捜査段階で作成された供述調書を調べることよりも、証人を法廷に呼び、直接証言してもらうスタイルが定着した。わかりやすい裁判が実現しつつあるのは間違いない。
公判前に争点を整理する必要性から、検察は弁護士への証拠開示を拡充した。弁護士との打ち合わせ時間を確保する要請もあって、被告の保釈率は上昇している。裁判員制度が刑事司法の運用に変化をもたらしたと言える。
気がかりなのは、裁判員の候補に選ばれながら、辞退する人の割合が増え続けていることだ。施行当初に53%だった辞退率は、2018年には67%に上がった。
この傾向に歯止めがかからないと、いずれは時間に余裕のある人しか裁判員を務めなくなる。職業や年齢に偏りが生じれば、幅広い国民の視点を反映させるという制度の根幹が揺らぎかねない。
原因と見られるのが裁判の長期化だ。初公判から判決までの平均期間は、10年間で2倍以上に伸びた。無論、充実した審理のために、必要な時間は確保せねばならないが、裁判所には可能な限り迅速な審理計画を立ててもらいたい。
企業など裁判員を送り出す側が、参加しやすい環境作りにどこまで協力するかも鍵を握る。
裁判員の経験が国民の間で共有されず、制度への理解が進んでいないとの指摘も根強い。裁判員に課せられる守秘義務が、貴重な体験を伝える際の障害になっていないか、検証が求められる。
裁判員の負担軽減も課題だ。裁判員裁判では37人が死刑判決を受け、3人の刑が執行された。究極の選択を迫られる精神的プレッシャーは計り知れない。継続的に相談に応じる体制を整えるなど、きめ細かなケアが重要である。



















