ウクライナ 問われる新大統領の対露政策

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 欧州とロシアの間に位置するウクライナの混乱は、欧州全体の安全保障に悪影響を及ぼす。事態の改善には、ウクライナの政治的安定の実現と、ロシアの自制が欠かせない。

 4月のウクライナ大統領選で当選したコメディー俳優、ゼレンスキー氏が新大統領に就任した。

 「政治の素人」を自認する清新さが有権者の支持を集めて圧勝したが、議会に支持勢力を持たず、就任日すら希望を通せなかった。厳しい政権運営を迫られよう。

 就任演説では、議会を解散し、10月の議会選を前倒しする意向を示した。自らが設立した政党を中心に多数派を形成できるか。国民が期待する汚職撲滅などで具体的な政策を掲げ、政権基盤を固めることが急務だ。

 懸念するのは、ロシアとの対立の激化である。

 5年前、南部クリミア半島はロシアに一方的に併合された。東部地域では政府軍と親露派武装集団の紛争が続く。クリミア周辺の黒海海域では昨年、海軍艦艇がロシア警備艇に拿捕だほされ、乗組員が拘束されたままだ。

 ポロシェンコ前政権はロシアへの敵対姿勢を強調するだけで、緊張を緩和できなかった。ゼレンスキー氏が、東部での停戦に最優先で取り組む方針を表明し、ロシアと「対話の用意がある」と述べたのは評価できる。

 ロシアとウクライナは、ドイツとフランスの仲介によって東部紛争の停戦で合意したが、履行に至っていない。停戦協議の再開に向けて、独仏は働きかけを強めることが求められる。

 看過できないのは、プーチン露大統領が「力による現状変更」の既成事実化を図っていることだ。クリミアではインフラ(社会基盤)整備や新型防空ミサイルシステムの追加配備が進む。

 大統領選直後の4月下旬には、親露派が多いウクライナ東部の住民を対象に、ロシア国籍の取得手続きが簡略化された。ウクライナは親露派と親欧州派で割れる。国民の融合をめざす新政権を揺さぶる思惑は明白だ。

 ロシアはクリミア併合後、国際的な孤立が深まっている。プーチン氏の支持率は併合直後は90%近くに上ったが、最近は欧米の制裁による経済低迷などで60%台に落ち込んでいる。

 ウクライナの政権交代を機に、緊張緩和に取り組まなければ、欧米との関係改善も制裁緩和も得られないことを、プーチン氏は認識しなければならない。

595968 0 社説 2019/05/22 05:00:00 2019/05/22 05:00:00

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