取り調べ可視化 冤罪防止と着実な事件解決を

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 適正な取り調べを通じて冤罪えんざいを防ぎつつ、着実に事件を解決することが重要である。

 改正刑事訴訟法の施行により、1日から取り調べの録音・録画(可視化)が義務付けられた。裁判員裁判の対象事件と検察の独自捜査事件で、逮捕・勾留された容疑者の取り調べの全過程が記録される。

 2010年に発覚した大阪地検特捜部による証拠改ざん事件を機に、刑事司法改革の議論が進み、様々な制度が導入された。今回の可視化の義務付けは、一連の改革の総仕上げと言える。

 これまで試行が重ねられてきたが、警察では、録画ボタンの押し忘れや捜査官の勘違いなどで、記録し損なったケースが散見される。裁判での立証に影響しかねないだけに、漏れがないよう、徹底することが欠かせない。

 可視化で期待されるのは、密室での取り調べ過程をガラス張りにし、自白の強要や誘導を防ぐことだ。また、取り調べ映像は、被告の供述の任意性や信用性を裁判で判断する際の材料になる。

 ただ、裁判における映像の取り扱いについては議論もある。

 栃木県の女児殺害事件で、1審の裁判員裁判は被告の供述する様子を収めた映像を重視して有罪とした。これに対し、2審は「印象に基づく直感的な判断になる可能性がある」と疑問を呈した。

 裁判所は映像のインパクトに留意しつつ、証拠として適切に活用する方法を探るべきだ。検察も供述に依存せず、出来る限り客観的な証拠で立証する必要がある。

 今回、義務化の対象となったのは、10万件を超す逮捕・勾留事件の数%にとどまる。逮捕前や起訴後の事情聴取は含まれない。対象の範囲が妥当かどうかは、引き続き検討課題となろう。

 一方、捜査力を落とさないことも大切である。可視化の導入に対しては、「容疑者の供述が得られなくなる」といった懸念が捜査当局に強かった。証拠を集めやすくするために、導入された制度の一つが、通信傍受の拡充だ。

 対象犯罪には組織的な詐欺や窃盗が加わり、6月からはさらに、柔軟な運用が可能になった。

 これまで、容疑者の通話を傍受する際は、通信事業者の施設内で行う必要があった。今後は事業者の立ち会いは不要となり、警察施設内で傍受することができる。

 国民の安全な生活を守る上で、こうした手法を駆使することは有効だろう。捜査当局は乱用を慎み、厳格に運用してもらいたい。

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616827 0 社説 2019/06/03 05:00:00 2019/06/03 05:00:00

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