鉄剤注射指針 選手の健康守るために決別を

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 日本陸上競技連盟が、不適切な鉄剤注射を防止する指針を公表した。これを機に、ドーピングまがいの行為から、決別しなければならない。

 貧血治療用の鉄剤注射が、中高生の中・長距離走選手の一部で、持久力を高める目的で使われていた。過度の鉄分蓄積は、肝臓や心臓に障害を来す。短期的には好記録を出せても、選手生命を縮める結果を招きかねない。

 鉄剤注射について、「若い競技者の生涯にわたる身体的・精神的な健康を阻害する」と指針が警告したのはもっともである。

 指針では、鉄剤を注射してよいのは、ほかに治療の選択肢がない場合に限定した。「大事な試合の前だ」「うまく走れない」などの理由は認めないと明記した。

 鉄剤注射が広まったのは、鉄分不足を招く食事制限や、過度なトレーニングが競技の現場で行われていたことが背景にある。指針が、鉄分を多く含む食事を取るよう推奨したのは理解できる。

 日本陸連は今年から、全国高校駅伝大会の出場選手に血液データを提出させる。異常値があれば、指導者の聞き取りを行い、不適切な鉄剤使用が確認された場合、出場停止処分などを科す。鉄剤注射をなくす決意の表れと言える。

 個人情報である血液データは、選手の同意を得た上で匿名化して活用する。練習状況や体形、年齢、記録の伸びと照らし合わせ、効果的な練習法を探る。プライバシー保護に十分注意して、競技力向上に生かしてほしい。

 スポーツ庁は1月、教育委員会や競技団体に、鉄剤注射の不適切使用を防止する通知を発した。厚生労働省と日本医師会も医療機関に同様の通知を出している。関係機関の連携が肝要である。

 スポーツは鍛錬を重ねて、自身の限界を伸ばしていく営みだ。ただ、勝利を目指すあまり、体に負荷をかけ過ぎた結果、健康を損なってしまう選手も少なくない。

 特に女子の選手は、エネルギー不足や無月経、骨しょう症に陥りやすい。新体操やフィギュアスケートなど、「体重管理の重要性が高い競技」のトップ選手は17%が無月経を経験していた。疲労骨折は4分の1に上っている。

 近年、女子選手の専門外来が東京大や順天堂大の付属病院に開設された。血液や骨密度を測定し、栄養指導も行う。こうした支援を充実させる必要がある。

 スポーツで重視されるべきは、選手の健康を守ることだろう。その点を改めて確認したい。

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625073 0 社説 2019/06/07 05:00:00 2019/06/07 05:00:00

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