病原体の輸入 厳重管理で感染対策に生かせ

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 危険な感染症が国内で発生した場合に備えて、対策を講じておくことが大切である。

 厚生労働省と国立感染症研究所が、致死率が高いエボラ出血熱などの生きた病原体を初めて輸入する方針を決めた。東京都武蔵村山市の感染研で、患者発生時の検査に備える。

 外国人観光客の増加などで、新たな感染症が国内に侵入するリスクが高まっている。来年夏には東京五輪・パラリンピックが開かれる。感染症対策の強化は、喫緊の課題と言えよう。

 輸入を予定しているのは、エボラ出血熱と、南米出血熱やラッサ熱など、計5種類の病原体だ。致死率は高いもので90%に及ぶ。

 生きた病原体を使うのは、検査の精度を上げるためだ。例えば、患者の回復具合を把握する場合、保管している病原体と患者の血中成分を混ぜ合わせると、その反応の仕方で他人にうつす力がなくなったかどうかが識別できる。

 迅速でより正確な診断と治療に役立てることが重要だ。

 感染研の施設は、安全性の国際基準で最も高い「BSL(バイオセーフティー・レベル)4」を満たす。病原体を反応させる検査は密閉された箱形の装置の中で行い、検査室も空気が外に漏れない構造になっているという。

 危険な病原体を扱う以上、厳重に管理するのは当然である。

 病原体を拡散させる、生物テロへの備えも欠かせない。

 研究者の身元確認を厳格に行い、人の出入りを監視カメラで24時間チェックする。テロリストに病原体を持ち出されないよう、警備を徹底してもらいたい。

 施設は住宅密集地にあり、不安を覚える住民も少なくない。施設自体は1981年に完成したが、事故を警戒する住民の反対で、危険度の極めて高い病原体は扱ってこなかった経緯がある。

 感染研は昨年冬から、施設の安全性について住民向け説明会を10回以上開き、大方の同意を得た。今後も説明を重ね、住民との信頼関係を深める必要がある。

 実際に国内で患者が発生した場合には、感染拡大を防ぐため、病院や地域の保健所、交通機関などの密接な連携がカギを握る。厚労省が中心となって、日頃から関係機関の意思疎通を図っておかなければならない。

 危険な感染症にはわからない部分も多い。長崎大では研究拠点として、BSL4施設の建設を進めている。治療方法を探るため、病原体の特性の解明を進めたい。

630530 0 社説 2019/06/11 05:00:00 2019/06/11 05:00:00

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