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安全とされる無人自動運転の新交通システムであってはならない逆走事故が起きた。システムを過信せず、改めて点検する必要がある。
事故が起きたのは、横浜市南部を走る「シーサイドライン」の始発駅だ。折り返して出発すべき車両が、逆の方向に約25メートル進み、時速20キロ超で車止めに衝突した。乗客14人が重軽傷を負った。
運営会社などの調べでは、車両側にある電気系統の配線が断線していた。断線により、進行方向の切り替えを指示する自動列車運転装置の信号が車両のモーターに伝わらなかったとみられる。
列車が逆走した際に自動的に停止させる装置はあったものの、この装置もまた、断線が原因で作動しなかったという。
断線などの異常が生じた場合に、安全を確保するバックアップ機能が欠けていたと言える。
そもそも、無人自動運転を行う他の新交通システムでは、断線で信号が途絶えると、車両が動かなくなる機能を持つところが多い。だが、シーサイドラインは、この機能を備えていなかった。
運営会社の想定に甘さがあったと批判されても仕方がない。
断線したのは、100本ほど束ねられた電線の中の1本だった。断線は運行による摩耗などでも起こりうる。目視による点検ではチェックしきれないだけに、早急なシステム改修が求められる。
シーサイドラインは事故の3日後から、運転士による手動運転で運行を再開した。利用者の不安は今も大きい。安全第一の運行を心がけてもらいたい。
シーサイドラインと同様の無人自動運転は、他にも全国に7路線ある。高架などの専用区間を走り、駅にはホームドアが設置されている。通常の鉄道に比べて事故が起きにくい構造とされる。
とはいえ、1993年に大阪市の「ニュートラム」で列車の暴走事故が起きたほか、2006年には東京の「ゆりかもめ」でも、タイヤの脱落事故があった。
各事業者は、今回のシーサイドラインの事故を他山の石として、自らのシステムに穴がないかどうか、点検すべきだ。
運転士らが将来、不足する事態に備え、鉄道各社は自動運転の検討を急ぐ。JR東日本は山手線の自動化の試験走行を始めた。
国土交通省は今回の事故を受けて、事業者や有識者による検討会を発足させる。無人自動運転の安全性を高めるための対策を、多角的に議論してほしい。