タンカー攻撃 航行の安全確保が最優先だ
完了しました
海上輸送の安全とエネルギーの安定供給を脅かす卑劣な行為である。民間の船舶に対する攻撃は断じて容認できない。
中東のホルムズ海峡近くのオマーン沖で、航行中のタンカー2隻が攻撃された。うち1隻は日本のタンカーで、2度にわたって砲撃を受けたという。乗員は全員避難し、救助された。
ホルムズ海峡は世界の原油輸送の大動脈と位置付けられている。日本がサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など中東諸国から輸入する原油も、大半がホルムズ海峡を通って運ばれる。日本のエネルギー供給の生命線だ。
国土交通省は業界団体を通じて攻撃現場の周辺を航行する日本関係の船舶に注意喚起した。政府は情報収集を進め、船舶の安全確保に全力を尽くさねばならない。
国連安全保障理事会は緊急会合を開いた。すべての理事国が「攻撃は国際法違反」と非難する認識で一致したのは当然だ。
米政府は、5月にサウジなどのタンカーがUAE沖で攻撃された事件と同様に、「イランに責任がある」と指摘した。
米軍は、攻撃を受けた日本のタンカーにイランの精鋭部隊「革命防衛隊」のボートが接近し、作業する様子を撮影した、とする映像を公開した。「不発だった吸着型の爆発物をタンカーの船体から回収している」と説明している。
一方、イランは一貫して、「米国の主張には根拠がない」と強調し、攻撃への関与を否定する。
誰が、何の目的で、どのように攻撃を行ったのか。具体的証拠の積み重ねが重要だ。監視を強化し、再発を防ぐことが欠かせない。
攻撃は、安倍首相がイランを訪問し、米国とイランの対立緩和に向けた仲介外交を行っている最中に起きた。情勢の深刻さを改めて突き付けられたと言える。
イランの最高指導者ハメネイ師は、首相との会談で、米国との対話を拒否する姿勢を示した。
トランプ米大統領も、「取引はまだ早すぎる」と表明し、軟化の兆しは見られない。
事態の沈静化に向けて、日本は引き続き、米国とイランの橋渡し役を務めることが大切である。
両国の強硬姿勢に歯止めがかからなければ、不測の衝突に至りかねない。米国は空母部隊を派遣し、イランではホルムズ海峡封鎖を警告する発言も出ている。
中東の不安定化は原油高を招き、世界経済も打撃を受ける。米国も地域大国のイランも、その責任の重さを自覚すべきだ。