海洋プラごみ 削減に生かしたい国際枠組み
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世界の海でプラスチックごみが深刻な汚染を引き起こしている。各国が協調して対策を講じることが欠かせない。
今月15~16日に長野県軽井沢町で開かれた主要20か国・地域(G20)のエネルギー・環境閣僚会合で、海に流れ出るプラごみの削減を目指す国際枠組みの創設が決まった。
各国がプラごみの回収や適正な管理について、行動計画を作り、毎年、
世界の海に流出したプラごみの推計値は、2010年で最大計1275万トンに上る。このうち、中国が353万トン、インドネシアが129万トンなど、G20参加国で全体の約半分を占めている。
今回、G20として、この問題に向き合う意義は大きい。
問題は、プラごみ対策の報告に強制力がなく、目標設定や、具体的な内容については各国に委ねられた点だ。国によって熱意や取り組み状況に差があり、一律の規制が難しいことが背景にある。
対策が進む欧州連合(EU)やカナダでは、使い捨てプラスチックの使用を禁止する方針を打ち出している。日本は、レジ袋の無料配布をやめる方向だ。
中国やインドネシアでは、政府がプラスチックのリサイクルを呼びかけているが、ごみを川に捨てる習慣や意識が改まらない。
大切なのは、新たな国際枠組みを有効活用し、国ごとの取り組みを着実に前進させることだ。
進捗状況を報告する会合には、情報交換を通じて、先進的な実践例を知り、プラごみ削減の意識を高める狙いもある。
第1回の報告会合は、11月までに日本で開かれる予定だ。会合がプラごみ削減の足がかりとなるよう、日本政府は準備に万全を期してもらいたい。
海洋プラごみの実態には、未知の部分が多い。
海で砕かれた微細なプラごみに有害な化学物質がどのように吸着するか。これらを飲み込んだ魚や海鳥が増えると、生態系にどんな影響が及ぶか。様々な汚染地域でサンプルを収集し、分析することが実態把握に役立つだろう。
今後、G20参加国は、海洋プラごみの素材から、排出ルートを特定する研究にも着手する。各国の連携がカギを握る。
日本の大学などは、海洋汚染や化学物質の毒性に関する研究で実績がある。海洋プラごみの科学的解明をリードしたい。