ハンセン病訴訟 家族への差別を重く見た判決

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 激しい差別、偏見を受けたのはハンセン病の元患者だけではなかった。家族の被害を重く捉えた司法判断である。

 熊本地裁が国に対し、元患者の家族約500人に総額3億7600万円の損害賠償を命じる判決を言い渡した。ハンセン病患者の隔離政策が、家族への差別も生んだとして、国の賠償責任を認めたのは初めてだ。

 ハンセン病は感染力が極めて弱いにもかかわらず、国は1996年にらい予防法を廃止するまで患者の隔離政策を続けた。

 2001年の熊本地裁判決は隔離政策を違憲とした。国はハンセン病補償法を作り、元患者らに1人最高1400万円を支払ったが、家族は対象外だった。今回の判決は、救済を家族にも広げるよう求めたと言えるだろう。

 家族の受けた苦しみは大きい。幼少期に病気の親と引き離され、親子の触れ合いの機会を失う。就学を拒否され、就職や結婚の際に差別を受けることもあった。

 こうした被害について、判決が「生涯にわたって継続するものであり、その不利益は重大だ」と言及したのはうなずける。

 地裁は判決で、国の隔離政策により、「ハンセン病は恐ろしい伝染病」という誤った認識が国民に植え付けられたと指摘した。そのことが家族に対する排除意識を強めたと認定した。

 そのうえで、ハンセン病政策を担当する厚生労働省は、病気に関する正しい知識を広めるなど、差別解消のための措置を尽くさなかったと結論づけた。法務省や文部科学省も、人権啓発や人権教育が不十分だったと批判した。

 関係省庁の取り組みに厳しい目を向けた判断だ。

 大切なのは、元患者だけでなく家族への差別や偏見を、社会からなくしていくことである。

 原告の中には、提訴後に親の病気を知られ、妻から離婚を切り出された人がいる。裁判に参加したことを家族に話せずにいる人も少なくない。原告の大半は、実名を明らかにしていない。

 現在も、差別が根強く残っている証左だろう。

 14年には、小学校の授業で、ハンセン病に関する誤った知識を教えられた児童が、「怖い」「友達がハンセン病にかかったら、離れておきます」といった感想文を書いたことが明らかになった。

 教育現場のほか、職場や町内会など社会のあらゆる所で、正確な情報を伝え、偏見を払拭ふっしょくする努力を重ねていかねばならない。

無断転載禁止
663033 0 社説 2019/06/29 05:00:00 2019/06/29 05:00:00

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ