米中首脳会談 制裁と報復の応酬に歯止めを

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建設的な対話で打開策を探れ

 米中両国は世界の国内総生産(GDP)の4割を占める。貿易戦争は、多くの国に深刻な影響を及ぼす。両国はその責任を自覚し、建設的な対話を積み重ねる必要がある。

 大阪市で開かれた主要20か国・地域(G20)首脳会議に合わせ、米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席が会談した。膠着こうちゃく状態に陥っていた貿易協議を再開させることで合意した。

協議再開も楽観できぬ

 協議は5月に物別れに終わり、世界経済の先行き懸念が強まっていた。決裂という最悪の事態はひとまず回避され、事態はわずかながら改善したと言えよう。

 トランプ氏は記者会見で、追加の制裁関税発動を当面見送るとした上で、「中国は、米中西部の農家が生産する農産品を購入することになるだろう」と述べた。

 米政府が制裁対象とする中国の通信機器大手「華為技術」(ファーウェイ)に米企業が製品を売ることを容認する考えも示した。

 ただ、両国の隔たりは大きい。問題の先送りに過ぎず、交渉の行方は楽観できまい。

 米側が見直しを強く求めている知的財産権の侵害や、自国企業への不透明な補助金支給を巡り、中国が実効性のある改革案を示せるかがカギになる。

 補助金を使った産業育成は、国が経済活動を主導する中国の国家戦略の根幹をなす。この問題を棚上げしたまま、自由貿易の重要性を訴えても説得力を欠く。

 外国企業に対する技術移転の強要も問題視されている。中国は行政などによる露骨な強制は禁じたが、「抜け道」は残されており、改善の余地は大きい。

 中国は、10月に建国70年を迎える。その節目の年に、米国に大幅な譲歩を強いられたとの見方が広がれば、習氏の威信に傷がつく。交渉の阻害要因となろう。

 補助金政策などについては日本や欧州も批判している。中国は、各国の不信感を取り除き、企業が安心して活動できる環境の整備に取り組まねばならない。

 来年11月の大統領選で再選を目指すトランプ氏は、貿易赤字の縮小にこだわる。先端技術や軍事面で中国との覇権争いは激化している。米議会は、与野党問わず、対中強硬路線を支持する。中国に安易に譲歩するとは考えにくい。

追加措置は自制すべき

 だが、制裁をちらつかせて屈服を迫る恫喝どうかつ外交だけでは、合意をより困難にするのではないか。

 米中両国は昨夏以降、それぞれの輸入品に高い関税をかけ合ってきた。その余波で、世界の貿易量は減少傾向にあり、製造業を中心に企業心理の悪化が目立つ。

 米国が検討していた対中制裁の第4弾は、約3000億ドル(約32兆円)の中国製品に最大25%の関税を上乗せするものだ。

 スマートフォンや衣料品など身近な製品が対象で、これまで以上に影響は大きい。小売価格に転嫁されれば、米GDPの7割を占める個人消費の重荷になる。

 世界の企業は部品供給網や設備投資の見直しを迫られる。米国は協議の結果次第で制裁を発動する構えだが、あくまで自制し、妥協点を見いださねばならない。

 中国は対抗措置として、ハイテク製品の生産に必要なレアアース(希土類)の輸出規制をほのめかしている。米国はレアアースの8割を中国から輸入する。制裁と報復の応酬に歯止めをかけることが何よりも重要である。

協力し北の非核化促せ

 北朝鮮の核・ミサイル開発は、米中が協力すべき課題だ。習氏は、先の訪朝で会談した金正恩朝鮮労働党委員長の意向をトランプ氏に伝えたとみられる。

 2月の米朝首脳会談が決裂した後、米国は北朝鮮に対して「完全な非核化」を求める姿勢を崩していない。段階的な非核化を容認する中国との溝は大きい。

 北朝鮮は一部の核施設を廃棄する見返りに、制裁の全面解除を求めている。金委員長が完全な非核化の決断に踏み切らず、具体的措置をとっていない以上、制裁圧力を緩めるのは時期尚早である。

 朝鮮半島情勢の安定に向け、中国は北朝鮮に対する影響力を行使し、米朝非核化協議の再開を後押しすることが求められる。

 トランプ氏が中国の人権問題を積極的に提起する姿勢を見せなかったのは気がかりだ。

 香港での「中国化」の動きや、少数民族のウイグル族への弾圧など、中国の「力の統治」には国際社会の懸念が強まっている。米国は習政権に、人権状況の改善を訴え続けねばならない。

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664585 0 社説 2019/06/30 05:00:00 2019/06/30 05:00:00

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