米朝首脳会談 非核化へ交渉を加速させよ
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朝鮮半島の南北分断を象徴する場所で行われた異例の会談である。米朝首脳がアピールした緊張緩和を北朝鮮の非核化にどうつなげるか。具体的な成果を出すことが重要だ。
トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、南北軍事境界線上の板門店で会談した。非核化を巡る米朝の実務者協議の再開で合意に至った。
2月に開かれた前回の首脳会談は、北朝鮮が部分的な非核化の見返りに制裁解除を求め、決裂している。5月には北朝鮮の短距離弾道ミサイル発射もあった。情勢悪化に歯止めをかけ、対話の流れを作り出したことは評価できる。
プーチン露大統領や中国の習近平国家主席が相次いで金委員長と会談し、影響力の拡大を図る中、米国が北朝鮮問題を主導する意思を示した意義は小さくない。
問題は、実務者協議を今度こそ軌道に乗せられるかどうかだ。米朝は交渉チームを作り、2~3週間以内の始動を目指すという。
米朝首脳が昨年6月の初会談で、「朝鮮半島の完全な非核化」で合意した後、実務者協議は頓挫を繰り返してきた。
米国は、北朝鮮の全ての核兵器、核施設の申告と廃棄を求める。北朝鮮は、核兵器の製造や実験の停止を約束したが、既存の核兵器の廃棄には言及していない。
トップ外交による仕切り直しを生かし、実務者協議でこの溝を埋める必要がある。非核化の手順や検証方法など、技術面での細部の詰めも求められる。
トランプ氏は金委員長にツイッターで会談を呼びかけ、実現させた。現職の大統領として初めて北朝鮮に足を踏み入れた。来年の大統領選を控え、「歴史的成果」を強調する狙いもあるのだろう。
安易な妥協は禁物だ。北朝鮮が非核化の行動に踏み出すまで、制裁を維持することが肝要である。日本の安全保障を揺るがす北朝鮮の短・中距離弾道ミサイルへの対処も欠かせない。
北朝鮮の国営メディアは「和解と平和の新しい歴史が始まった」と
トランプ氏が北朝鮮に入ったことについて、金委員長は「良くない過去を清算する勇断の表現だ」と持ち上げた。米国との関係正常化や平和協定を求めるのなら、核、ミサイルの脅威を軽減し、地域を安定させる措置を取るべきだ。