岐阜・中3死亡 いじめ告発を生かせなかった
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いじめの情報が寄せられながら、最悪の事態を防げなかった。
岐阜市の中学3年の男子生徒が3日、6階建てのマンションから転落死した。自宅には、同級生から金銭を要求されていたと受け取れるメモが残っていた。
市の教育委員会はいじめがあったと認めた。いじめを苦にした自殺の可能性が高いとみられる。
悔やまれるのは、救えたかもしれない機会があったことだ。
5月末に、同じクラスの女子生徒が担任教員に、男子生徒がいじめを受けていると告発する手紙を渡していた。給食の際に苦手な食べ物を押しつける、筆箱を隠すなどの内容が書かれていた。
「私も一緒に戦います。先生、力を貸してください」。見て見ぬ振りをせず、勇気を振り絞って声を上げたのだろう。
担任は、加害者として名前の挙がった生徒らから話を聞き、悪ふざけの範囲だと判断した。女子生徒の手紙は廃棄したという。
6月中旬に行われた生活に関するアンケートで、別のクラスメートも男子生徒へのいじめを指摘した。担任が確認すると、男子生徒は「大丈夫です」などと答えた。転落死はその2週間後だった。
様々な心理的事情から、いじめを受けていることを認めない中学生は少なくない。同じクラスの複数の生徒がいじめを告発した点を重視すべきではなかったか。
いじめの情報が管理職らと共有されず、学校として組織的対応が取れなかったことが残念だ。
男子生徒の死亡後、「蹴られていた」「トイレで土下座をさせられた」などの証言が学校に寄せられた。早い段階で学校として聞き取り調査などをしていれば、実態を把握できた可能性がある。
文部科学省は、いじめ防止対策推進法に基づき、早期発見と組織的対応に努めるよう繰り返し学校現場に求めている。だが、実践できていないケースが目立つ。
岩手県矢巾町で4年前に自殺した中学2年生は、担任にいじめ被害を訴えていたのに、教員間で情報は共有されなかった。
兵庫県尼崎市の中学2年生の自殺に関して、今年3月に公表された第三者委員会の報告書は、「アンケートに書かれたいじめの被害を担任が見ておらず、聞き取りもしていなかった」と批判した。
教員の感度が、生徒を救う頼みの綱である。助けを求めている子供がいないかどうか。現場の先生たちは、自分の教室を、いま一度見渡してもらいたい。