和牛の海外流出 流通管理でブランドを守ろう

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 和牛ブランドは、日本が世界に誇る貴重な財産である。海外への流出を防ぐ手立てを講じることが欠かせない。

 和牛の受精卵と精液が中国へ持ち出されそうになった事件を受け、農林水産省が遺伝資源の流通管理を徹底する案をまとめた。家畜改良増殖法を改正し、売買に携わる施設に記録の作成と保管を義務付ける。

 和牛の遺伝資源を扱うのは、都道府県から許可を受けた家畜人工授精所などの施設だ。畜産農家の注文を受けて販売したり、売買を仲介したりするが、取引記録を残さないところが多い。

 売買の当事者を記載した帳簿が作られるようになれば、遺伝資源が流出した場合に、その経路をたどりやすくなる。流出を抑止する効果が期待できよう。

 都道府県の多くは、施設への立ち入り検査を実施してこなかった。遺伝資源の管理が現場任せになっていた面は否めない。定期的に立ち入り検査を行い、管理状況を確認することが必要である。

 農水省は、売買の当事者に契約書を交わしてもらい、「第三者に販売しない」という条項を盛り込むことを目指す。契約書なしの取引が、遺伝資源の横流しにつながりかねないためだ。

 海外ではブタの遺伝資源を販売する際に契約を結ばせている例がある。無断で交配に使うことを禁じ、契約を守らなかった場合には違約金を支払う義務も明記している。遺伝資源の不正利用を防ぐ方法として参考になるだろう。

 今回の流出事件では、運搬役2人が有罪判決を受け、流出元の施設運営者1人も起訴された。伝染病を防ぐための家畜伝染病予防法違反などが適用された。遺伝資源の海外流出そのものを取り締まる法律がなく、苦肉の策だった。

 輸出を直接禁止する法律の整備を求める声もあるが、こうした法は、自由貿易を原則とする世界貿易機関(WTO)のルールに抵触しかねない。まずは、国内における遺伝資源の適切な流通体制を構築することが急がれる。

 和牛は軟らかな肉質が特徴で、海外で評価が高い。遺伝資源が国外に流出し、現地での繁殖に使われると、日本の畜産農家は深刻な打撃を受ける可能性がある。

 「海外の業者から、和牛の受精卵や精液を売ってほしいと持ちかけられた」。そんな証言をする畜産農家は少なくない。

 和牛ブランドが狙われているという危機意識を、畜産業界が共有することが大切である。

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684211 0 社説 2019/07/11 05:00:00 2019/07/11 05:00:00

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