文化芸術 人をつなぐ力を生かしたい
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文化芸術は心を潤し、時には、人と人とをつなぐ役割を果たす。その潜在力を生かせないか。参院選を機に、改めて考えてみてはどうだろう。
演劇や音楽、アートや文化財が社会にとって有用な資源だと感じさせられる事例は多い。
演出家の蜷川幸雄さんが設立した埼玉県の劇団は、高齢者で構成される。もともと演劇経験のほとんどなかった人たちが厳しい稽古を重ねて舞台に立ち、一つの作品を作り上げる。
高齢者が生き生きと自分を表現する姿を見て、勇気づけられる人は多いだろう。
障害者の芸術活動を紹介する展覧会やイベントも増えている。絵画や彫刻の中には「芸術性が高い」と評価されるものも少なくない。障害者と社会との貴重な接点になっていると言えよう。
富山市の富山県美術館は屋上に立山連峰を一望できる無料庭園を設けた。市民は憩いながら、館内の現代アートを鑑賞する。生活と芸術が混ざり合い、にぎわいが生まれた好例として評価が高い。
日本は高齢化が一層進み、一人で暮らすお年寄りも増えていく。文化に触れることで、孤独が癒やされる人もいるに違いない。
公明党は公約で「文化資源を活用したコミュニティーの形成」を掲げている。各党は、地域につながりと安心感をもたらすような文化政策を、もっと論じ合ってもいいのではないか。
各地に残る文化を再発見し、地域振興などにつなげようという取り組みも見られる。
文化庁が認定する日本遺産は、点在する文化財をストーリーにまとめて評価する試みだ。江戸時代の旅人が歩んだ箱根の山の石畳道など80件以上が選ばれた。
これらを地域の観光PRに役立てることで、旅行客の増加といった経済効果が期待される。
文化芸術を輸出産業として伸ばすことも有望な施策である。
政府は日本文化を海外発信するクールジャパン戦略に取り組むが必ずしも順調とは言えない。
日本のマンガやアニメは世界的な注目を集め、落語家の公演が欧米の聴衆に受け入れられている。海外で日本文化の人気が高い状況を生かす工夫が求められる。
文化政策を充実させる際に重要なのが、担い手の支援である。
伝統芸能の継承者や文化財の保存・修復技術者を育てる。アニメの作り手らの労働環境を改善する。こうした人づくりを後押しすることが欠かせない。