EU新体制 欧州の存在感低下に歯止めを

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 米国と中国の覇権争いは激しさを増し、英国は欧州連合(EU)離脱を進める。EUの結束と国際協調を維持し、存在感の低下に歯止めをかけることが新体制の課題となろう。

 今年秋に交代するEU主要ポストの人事が決まった。政策立案や法案作成などを担う欧州委員会の委員長には、ドイツのフォンデアライエン前国防相が就任する。EU首脳会議で指名され、欧州議会で承認された。

 フォンデアライエン氏は「より強い欧州」を唱え、多国間の枠組みや自由貿易の堅持を訴えた。記者会見で「困難な激動期の世界で欧州が必要とされている」と述べ、EUの存在意義を強調した。

 トランプ米政権の「自国第一」主義や中国、ロシアの強権政治によって、国際秩序は揺らいでいる。米国とイランの対立で、中東の緊張が高まっている。国際ルールを尊重するEUが果たすべき役割は、大きいはずだ。

 1国だけでは対処できない気候変動問題や巨大IT(情報技術)企業対策でも、現実的な取り組みを示す必要がある。

 域内の自国第一主義への対処も新委員長の課題だ。

 ポーランドやハンガリーは、EUが割り当てた難民受け入れを拒否している。強権的な政権による司法や報道機関への介入が問題視されている。

 イタリアのポピュリズム(大衆迎合主義)政権は、経済成長のための財政出動を志向する。EUの財政規律の厳格な順守を求める欧州委員会との摩擦が絶えない。

 EUの求心力を一気に高める即効薬はない。難民や経済、雇用は加盟国の国民にとって切実な問題だ。難民流入を適切に管理するための警備強化や、域内経済の南北格差の緩和策などを進め、信頼を取り戻すしかあるまい。

 今回の人事は、仏独両国が主導した。欧州中央銀行総裁には、フランス人のラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事、欧州理事会常任議長(EU大統領)にはミシェル・ベルギー首相が就く。

 フォンデアライエン氏の人事承認は難航し、僅差で可決される異例の事態となった。欧州議会の最大会派が推薦した候補を、フランスが、国際的な経験の不足を理由に退けたからだ。仏独の「密室人事」に批判が集まった。

 欧州議会は、5月の選挙で中道右派・左派が退潮する一方、リベラル、環境派が伸長して、多極化している。欧州委員会と議会の丁寧な意思疎通が求められる。

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713315 0 社説 2019/07/29 05:00:00 2019/07/29 05:00:00

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