低投票率 50%割れに危機意識を持て
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投票率の低落を深刻に受け止め、政府や自治体などはさらなる手立てを講じる必要がある。
参院選の投票率は24年ぶりに5割を割った。
自民党の1強体制が強まり、野党も存在感を示せていない政治の現状が、投票所から足を遠のかせた面はある。とはいえ、2人に1人が投票しないようでは、民主主義の土台が揺らぎかねない。
際立つのは若者の関心の低さだ。抽出調査によると、18、19歳の投票率は31・33%で、2016年の前回参院選を15ポイントも下回った。19歳に限ると3割を切る。
18歳選挙権が初めて導入された前回は、模擬投票や出前授業など投票の意義や仕組みを教える取り組みが活発に行われた。3年がたち、学校現場の熱意が失われているのではないか。主権者教育を充実させねばなるまい。
新しい学習指導要領により、高校では22年度から必修科目「公共」が設けられる。国の仕組みや安全保障など、現実の課題に即したテーマを学び、自らの問題として考えさせる狙いだ。
財政再建や社会保障制度改革の行方は、若い世代の将来にかかわる。早い時期から社会や行政への関心を持てるよう、息の長い指導を考えてもらいたい。
大学進学などで転居した後も、住民票を実家に残す学生が少なくない。不在者投票が煩雑なこともあり、学生が棄権する要因と指摘されている。学生に、住民票の異動を促すことが欠かせない。
だれもが投票しやすい環境を整えることが重要である。
人口減少などの影響で、全国の投票所数はピークから約1割減った。巡回バスの運行やタクシー利用など、投票所への交通手段を確保する。移動が困難な高齢者には、郵便投票を促す。自治体には、きめ細かい配慮が求められる。
期日前投票は増加傾向にあり、今回は計1706万人が投票した。有権者の約16%にあたる。
公共施設だけでなく、ショッピングセンターや大学、駅などに投票所を置く市町村が増えている。こうした動きを広げるべきだ。
候補者や政党の主張を見極めて選択することに意味がある。早めに票を投ずる際に、心に留めておきたい。自治体は選挙公報の速やかな配布に努めるべきである。
総務省は今年度、海外居住者のインターネット投票の実証実験を予定する。マイナンバーカードで本人確認を行う。国内の投票に応用できるかどうか。不正防止策を含め、検討を重ねるべきだ。