富裕層の税逃れ 海外資産の把握着実に進めよ

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 国民が不公平感を抱かないよう、富裕層の課税逃れに対する監視を怠ってはならない。

 海外にある資産を届け出る「国外財産調書」を提出しなかったとして、大阪国税局が、京都市の家具輸出入会社社長を告発した。不提出での告発は初めてである。

 国外財産調書制度は、日本の富裕層が海外に保有する資産の把握が目的だ。預金や不動産などが5000万円を超えれば、税務署への報告を義務付ける。

 未報告が横行する状況を許すことは、課税逃れの温床となりかねない。厳正な対処は当然だ。

 制度が2014年に導入された背景には、国際的な課税逃れへの対応を迫られたことがある。

 国境を超えるマネーの動きを捕捉するのは難しい。特に匿名性が高いパナマや英領バージン諸島などのタックスヘイブン(租税回避地)の金融機関を使われると、口座情報を入手しにくい。

 以前から、日本の金融機関に対し、海外金融機関とのやりとりが100万円を超えた取引を税務署に報告するよう義務付けていた。だが、送金の目的は確認できず、実態をつかみきれなかった。

 調書制度の導入以降、届け出があった海外資産は増加し、17年分は約9500件、3兆6000億円に上った。国税当局は引き続き資産の把握を進め、適正な課税につなげるべきだ。

 国際的な連携も欠かせない。

 経済協力開発機構(OECD)は、世界各国の口座情報を交換する仕組みを整えた。各国の税務当局が、CRS(共通報告基準)と呼ばれるルールに基づき、自国に住んでいない人たちの口座残高などを年1回報告し合う。

 約100か国・地域が参加し、昨年から加わった日本は、64か国・地域から約55万件の情報を入手した。この情報から相続税の申告漏れを指摘できた事例もあり、効果は出ていると言えよう。

 ただ、CRSに参加していない国へ預金を移すなど、国際連携の網をかいくぐろうとする動きがある。CRSにはタックスヘイブンも参加している。提供情報の正確性のチェックも必要だ。

 各国との意思疎通を深め、監視の実効性を高めねばならない。

 国税当局は国内の富裕層に関する情報収集も強化している。17年度に指摘した所得税の申告漏れ額は前年度比52%増の約670億円に達した。納税に対する国民の理解を得るためにも、適正な申告を徹底させることが求められる。

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734827 0 社説 2019/08/10 05:00:00 2019/08/10 05:00:00

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