終戦の日 国際協調の重み かみしめたい

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 ◆惨禍の教訓を令和に生かそう◆

 令和になって初めての終戦の日を迎えた。新しい時代に世界の平和をいかに築いていくか。「自国第一主義」が強まるなか、先の大戦の教訓を改めて考える機会としたい。

 政府主催の全国戦没者追悼式が、東京の日本武道館で行われる。5月に即位した天皇、皇后両陛下をお迎えする。

 大戦では、310万もの命が失われた。日本は惨禍を重く受け止め、戦後74年にわたって平和国家としての道のりを歩んできた。その認識は、代替わりしても変わることはあるまい。

 ◆戦史研究深める時代に

 戦争を直接体験されていない両陛下の出席は、時代の変化を映し出している。体験者が昭和の戦争を語る時代は終わりつつあることが実感されよう。

 だからこそ令和の時代は、戦争の歴史を語り継ぎ、研究を深める時代としなければならない。

 日本はかつて針路を誤り、無謀な戦争に突き進んで破滅した。その要因を様々な角度から分析する研究が重ねられている。

 筒井清忠さんの「戦前日本のポピュリズム」は、日本が米国との戦争に至った要因の一つとして、ポピュリズム(大衆迎合主義)に焦点を当てた。

 外交官から政治家に転じた松岡洋右は、1933年に国際連盟からの脱退を宣言し、日本の孤立を深めた。37年の日中戦争勃発時に首相だった近衛文麿は、軍部による戦線の拡大を許した。

 これらの政治家は、大衆人気を集めることに努めたポピュリストだった。40年の日独伊三国同盟の成立にも中心的役割を果たした。当時はドイツが欧州各国に侵攻し、大衆も「バスに乗り遅れるな」との雰囲気だったという。

 ポピュリズムに引きずられず、正確な情報に基づいて世界情勢を冷静に分析し、国益にかなう戦略を構築する。その重要性を現代に伝えていると言えよう。

 ◆情報力と分析力磨け

 今年の読売・吉野作造賞を受賞した牧野邦昭さんの「経済学者たちの日米開戦」は、日本が41年に対米開戦を選んだ理由について、新たな見方を提起している。

 日米には圧倒的な国力差があり、短期的には持ちこたえられても、2~3年の長期戦になれば困難な情勢に陥る。その事実は日本の指導者も分かっていた。経済学者による陸軍への報告書でも同様の分析が示されていた。

 それでも開戦を決断したのは、精神主義だけでなく、「現状維持より、低い確率でも事態打開の可能性を選ぶ」という人間の心理が働いたからだと指摘している。

 正しい情報があっても正しい選択をするとは限らない。これもまた、歴史が伝える教訓だろう。

 戦後の国際秩序は現在、大きく揺らいでいる。各国が自国の利益を優先させる状況は、世界が大戦に向かった1930年代と似ているとも指摘される。

 トランプ米大統領は、「世界の警察官」としての米国の役割を否定し、多国間の協調体制の維持に消極的な姿勢を示している。

 戦後、統合を推進してきた欧州では、テロの懸念や生活への不安から移民排斥を訴えるポピュリズムが広がる。英国は欧州連合(EU)離脱を巡る混乱が続いている。

 自由主義陣営を支えてきた主要国の変容は、その一員である日本にとって大きな懸念材料である。

 一方、中国は急速に台頭し、強権政治のもとで南シナ海の軍事化などを進め、脅威を増大させている。クリミアを併合したロシアとともに、「力による現状変更」を辞さない姿勢を強める。

 韓国の文在寅政権は、互いの立場の違いを乗り越えて成立させた日韓請求権・経済協力協定を顧みず、関係悪化の流れに歯止めをかけようとしない。

 ◆問われる外交の主体性

 日本に求められるのは、刻々と変化する世界情勢を的確に分析し、正しい選択を行うことだ。

 そのためには、これまで以上に外交力が問われる。

 戦後の日本外交は、日米同盟と国連中心主義を基軸としてきた。戦争が起こらないようにするためには、自由や民主主義、法の支配に基づく国際協調体制を維持していくことが欠かせない。

 時には、米国をはじめ、友好国にも注文を付け、多国間協議をリードするといった積極的な行動が求められよう。

 条約や国際協定、慣習法などからなる国際法の尊重を通じて、各国が相互に信頼できる環境を醸成していくことが大切だ。

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742601 0 社説 2019/08/15 05:00:00 2019/08/15 05:00:00

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