カシミール情勢 インドが緊張を激化させた

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 インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方の緊張が一段と高まった。情勢を悪化させたインドの責任は重い。

 イスラム教徒が多数を占めるインド北部ジャム・カシミール州の自治権を、インドが剥奪はくだつした。現地の住民やパキスタンは反発している。

 住民は、ヒンズー教徒が約8割のインドへの帰属意識が低い。独立を求める声も強く、約70年間、自治権が認められてきた。

 インドのモディ首相は、イスラム過激派が同州を拠点にインドへのテロを仕掛けているとし、直接統治によって「テロを排除し、開発を進める」と主張する。

 自治権を剥奪する大統領令に署名した後、現地に治安部隊を配備し、反対する独立運動家らを大量に拘束した。インターネットや電話も遮断した。

 これで「世界最大の民主主義国」を自任できるのか。あまりに強権的な手法である。

 今回の決定で、州外のインド人にも不動産の取得が認められるようになる。ヒンズー教徒が多数移住し、人口構成が変わる可能性がある。イスラム教徒との対立が激化することは避けられまい。

 モディ首相率いる与党・インド人民党は「ヒンズー至上主義」を掲げる。今春の総選挙でも、パキスタンへの強硬姿勢やカシミールの直接統治を訴え、圧勝した。

 経済運営に対する根強い批判をかわすため、イスラム教を国教とするパキスタンへの対抗心や宗教間の対立をあおる戦術は危うい。力による統治は社会の分断やテロを招き、国内の不安定化につながるのではないか。

 パキスタンはインドとの貿易の一時停止や、外交関係の縮小などの対抗措置を取った。カシミール地方の一部を実効支配する中国も、「中国の主権への挑戦だ」と批判を強めている。

 懸念されるのは、印パの大規模な軍事衝突に発展することだ。2月にはカシミール地方での自爆テロを契機に、インドのパキスタン空爆や、パキスタンによるインド軍戦闘機の撃墜が起きている。

 印パ中3か国はいずれも核保有国だ。地域の緊張をこれ以上、高めてはならない。

 トランプ米政権が事態を静観する姿勢にとどまっているのは物足りない。モディ政権は米国の介入を拒んでいる。

 日米が共有するインド太平洋構想の実現には、印パ関係の安定が欠かせない。日米は両国に最大限の自制と対話を促すべきだ。

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749052 0 社説 2019/08/19 05:00:00 2019/08/19 05:00:00

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