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原発事業に対する不信を招きかねない愚行である。経営陣は猛省しなければならない。
関西電力の八木誠会長や岩根茂樹社長を含む幹部ら20人が、高浜原子力発電所が立地する福井県高浜町の元助役から、3億2000万円相当の金品を受け取っていた。
元助役は町の有力者で、高浜原発の工事を請け負っていた町内の建設会社から、手数料名目で約3億円を提供されていたという。
岩根社長は、金品授受が工事発注の見返りではない、と釈明しつつ、「元助役との関係が悪化した場合、原子力の事業運営に悪影響が出るのではないかと思い、なかなか返せなかった」と語った。
不透明な癒着を疑われても仕方がないのではないか。
菅原経済産業相が、記者会見で「立地地域の信頼に関わる。極めて重要な事案で厳正に処する」と語ったのはもっともである。
原発は安定的に発電できる基幹電源である。社会に対して重要な事業を担っている以上、電力会社の経営陣が、襟を正さなければならないのは当然のことだ。
原発の運転には地元自治体や住民の理解が欠かせない。だからこそ経営陣には、透明性の高い、節度あるつき合いが求められる。
金品の授受は、少なくとも2011年から昨年まで続いた。中元や歳暮、就任祝いといった名目で、現金やスーツの仕立券を手渡しされた。安易に受け取っていたのは、あまりにも認識が甘すぎる。
関電は、金沢国税局から指摘を受けて社内調査を行い、会長や社長らの報酬返上などの処分を行った。これまでに「儀礼の範囲内のもの以外は返却した」というが、それで済む話ではあるまい。
関電の社内規定には、金品を受け取った場合、会社に報告する義務はなかった。コンプライアンス体制がきちんと整備されていなかったことが、規範意識の低下につながった側面もあるだろう。
再発を防止するためには、経営陣をはじめとする全社的な意識改革が急務である。
1970年に大手電力会社として初めて原発を稼働させた関電は福井県内に美浜、高浜、大飯の3原発を保有する。
東日本大震災後の新規制基準に適合した高浜3、4号機は再稼働済みで、1、2号機では再稼働に向けた安全対策工事が続く。
今後の再稼働を円滑に進めていくためにも、関電は今回の事態を重く受けとめ、信頼の回復に努める必要がある。