英国の新提案 円滑なEU離脱につながるか

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 欧州連合(EU)との妥協点を本気で探るつもりなのか。「合意なき離脱」も辞さない英国のジョンソン首相のかたくなな政治姿勢が問われよう。

 英政府が、EU離脱に関する新たな案を提示した。

 最大の課題は、英領北アイルランドと、地続きのEU加盟国アイルランドの国境を、離脱後にどう管理するかだ。

 北アイルランドでは20世紀後半、アイルランドへの併合を求めるカトリック系と、英統治の継続を望むプロテスタント系の住民が対立し、武力紛争に発展した。

 対立の再燃を防ぐため、国境の自由な往来を維持する方針では、英国、EUともに一致する。

 新提案の特徴は、英国全体がEUの関税同盟から抜ける一方、北アイルランドの物品の規格については、EUのルールを適用すると明記したことだ。

 これにより、アイルランドとの間で物品の税関検査が復活しても農産品の検疫などは避けられる。国境周辺での検査は行わず、手続きの電子化を活用することで、円滑な物流を確保できるという。

 技術的に実現可能かどうかは、不透明だ。EUルールの適用には北アイルランド自治政府・議会の承認も条件となる。

 欧州議会が「EUの単一市場に抜け穴ができる可能性がある」と懸念を示したのはうなずける。

 英国政府には、EUとの交渉で新提案に関する疑念を払拭ふっしょくし、修正に柔軟に応じる責任がある。

 離脱期限は10月末に迫っている。円滑な離脱には、英国とEUが今月中旬をめどに協定案で合意したうえで、英議会の承認を得ることが必要だ。合意や承認手続きの困難さを考えれば、期限の延長が現実的な策となろう。

 問題は、ジョンソン氏が「10月31日に離脱する」と、繰り返し公言していることだ。新提案について「英国側の合理的な妥協だ」と主張し、EU側に譲歩を迫る。歩み寄りがなければ、「合意なき離脱」に進むとも強調している。

 英議会が先に成立させた法律は、EUと合意できない場合、ジョンソン氏が離脱期限の3か月延長をEUに要請することを義務付けている。10月末の離脱に固執するのは、法を無視していると批判されても仕方あるまい。

 ジョンソン氏が決定した議会の長期閉会は、最高裁で覆された。「議会の憲政上の機能を妨げる違法な措置」と判断された。独善的な手法で政策は実現できないことを認識しなければならない。

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829989 0 社説 2019/10/05 05:00:00 2019/10/05 05:00:00

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